5-19
龍好の申し出に対し猫耳に黒縁メガネを装備した猫屋の店員さんは……
とっても渋い顔で、こう言った。
「大変申し訳ございません。大口の取引がありまして現在それを買い取るほどのキャッシュがないんですよ……」
「なんでじゃ~~~!」
「で、ですが、お客様さえ良ければ、物々交換という方法もありますので、例えばこちらの聖剣などいかがでしょうか?」
それには、とんでもない値段が付いてた。
煌びやかで装飾された剣はとても上等そうに見えたが欲しくない物に価値は無い。
「や、それだと、糸買えないんで困るんですって!」
「糸ですか?」
「はい、クジラでも釣れる糸が欲しくって、それなりのキャッシュがないと困るんですよ」
店員のお姉さんは、柏手をうつ。
「なるほど、全額キャッシュでなくて良いならいい物があります!」
と言って、店員さんが奥から持ってきたのは、ものすごく上等そうな釣り竿だった。
「こちらは、トリガーロッドの上位互換。シャインロッドと言いまして、釣り師専門の装備品なのですが見ての通り、装飾だけでなく性能が桁違いに凄くてですね。特に魔法強化糸とセットで使うことで魔法を吸収したり、吸収した魔法を使った攻撃が出来ると言う優れものなのです! 誰も買い取ってくれる人がいない不良在庫なのですが、いかがでしょうか?」
「ちなみにいくらですか!?」
「150万キャッシュになります」
「それとこれ、交換しても糸買えますか!?」
「あ、いえ、まだ、他にも何か物々交換と言う形での取引になりますので、糸は余裕で買えますよ」
「ほな、たっくんうちコレが欲しい!」
そう言って、栞が見せてきたのは結婚指輪だった。
それを見た、店員さんが、またもや渋い顔をする。
「実は、それ、問題のあるアイテムでして……」
「や、多少の問題とかいいから売ってくれ!」
「では、説明させていただきます。実は、それ別名。呪いの指輪と言われてまして。いったんつけてしまうと外す時は10万円が必要になるんです」
「は? この世界の通過ってキャッシュじゃないの?」
「つまり、リアルマネーで10万使わないと外せない仕様になっているんです」
「なんだ、そんなことかよ……」
「なんだじゃありませんよ! 人の心は移ろいやすい物。一時の思い出代わりに買って後悔した人を山のように見てきましたからね。それになにより、名前の横に赤いバラが装飾されるようになりまして、コレは結婚している相手がいますって意味になるので気軽にナンパとかも出来なくなるんですよ!」
「なるほど、つまり、この指輪さえ嵌めていれば変な虫がよって来ないと言うことですね」
「まぁ、そういう考え方もありますが……」
「では、私も、コレ頂くわ」
「じゃ、じゃぁ、私も……」
栞が左手の薬指に、はめると、みらいも続く。
刹風だけは、少し考えてから、赤い顔して左手の薬指にはめた。
「はい、コレは、たっくんの分や~」
「あぁ、ありがとうな栞」
龍好は、なんのちゅうちょもなく左手の薬指にはめた。
最初は。ちょっと緩いかなって思ったのもつかの間。
直ぐにちょうどいいサイズになっていた。
「で、後は、何と何を買えばいいんだ!?」
「あ、いえ。結婚指輪は大変高価な物でして、残りの120万キャッシュは、支払えますので……」
「じゃ、じゃぁ、これで糸買えるんだな!?」
「はい、お取引ありがとうございます」
「いや~。こっちこそありがとうございます」
こうして、ようやく魔法強化糸を手にできたのだった。
「おっしゃー! 栞見ててくれよ! 今回も大物賞取って見せてやるからな!」
「了解や~! 期待しとるよ~!」
「むっぴ~~!」
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