5-11
みらいは、龍好が連れていたと言う小動物の話を栞から聞いて焦っていた。
リアルでは見えない目がリトライでは見える理由。
それは、アテライエルが存在している事を意味すると思ったからだ。
だから、栞におんぶを要求して、なるべく早く合流してほしいと願う。
その、おかげで簡単に合流出来たのは良いが……
「ずいぶんと嬉しそうね龍好!」
「あ、ああ、みらいか……」
「むぴゃ!」
ピー助(仮)は、嬉しそうに尻尾をフリフリしながらみらいに近づく。
一見すると小型の犬にも見える煌びやかな薄い緑色の毛並み。
毛足の長いモフモフした生物。
その姿は、母親が描いた絵本に出てくるアテライエルにそっくりだった。
もう、疑う余地はないだろう。
昨晩の召喚魔法が成功した証である。
問題は、みらいのところでなく、龍好のところに現れたと言う事実だった。
その意味が、全く分からないが、分からないのだが……
今は、刹風とラブラブした雰囲気を醸し出す龍好が面白くなかった。
「なぁ、もしかして、ピー助(仮)は、みらいの使い魔みたいな感じなのか?」
「そんなことより、どうして二人が良い雰囲気になってるのか聞きたいのだけれど!?」
龍好がこたえるよりも、刹風がその場しのぎの言い訳を言うよりも早く。
「そんなん昼間のラブラブアイスイベントがボケやなかったってせっちゃんが認めたからなんよ~」
栞が、ここぞとばかりに爆弾を投下していた。
ギロリと睨み上げるみらいの瞳に刹風は言葉につまる。
「本当なの刹風!?」
「え~と、その……」
「ふ~ん。ボケでやってるように見せてただけで確信犯だったとは意外だわ!」
「べ、べつにいいでしょ! あんたなんかいっつも似たようなことしてるじゃない!」
「ふ~ん。認めるんだ!」
みらいの手がプルプルと震えていた。
本当は、アテライエルの事を優先すべきなのに、分かっているのに気持ちが止まらない。
「だったら、私も――」
「むっぴゃ~~!」
まるで、みらいの気持ちを代弁するかのようにピー助(仮)が龍好の顔に飛びつく。
そして、ぺろぺろと舐めまくるのだった。
「あははは、くすぐったいってピー助」
「むぴゃぴゃぴゃ」
その無邪気な姿を見て羨ましいと思う、みらいと刹風。
少なからずツンツンした空気が和やかになっていた。
「って、ゆーか、龍好。ピー助ってなによ?」
「あぁ、仮だよ仮。とりあえず飼い主見つかるまでって思ってたんだけど」
「その子は、あ……」
本当の名前を言おうとして、口ごもってしまうみらい。
なんとなく今は言うべきではないと直感したからだ。
だから、
「いいわ。とりあえずピー助って事にしておきましょう」
そう言って、妥協したのだった。
「そうか、ピー助でいいってよ!」
「むっぴゃ~~!」
尻尾をグルグルしながら大はしゃぎするピー助。
「ほな、その子の名前は、ぴーちゃんで決定やね! で、これからどないするん?」
「俺は、クジラでも釣れる糸が欲しい。そこでゴールデンゴーレムとやらを倒しに行きたい!」
みらいは、龍好の言っている事がボケなのか真剣なのか計りかねていた。
刹風は、ゴールデンゴーレムと聞いて目を輝かせていた。
栞は、相変わらずのマイペースで、
「ほな、それにきまりやなぁ~」
万歳して喜んでいて――それにピー助も続く。
尻尾をフリフリしていてとても嬉しそうだ。
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