4-9

 始めて一つの目で食べる食事も、なんとか終わり。

 いつもの日課よろしく、ソファーで天気予報を眺めている龍好。

 そのとなりで、みらいがこれはこれで悪くないのかも、なんて思いながらチーム名を眺めていた。


 真剣狩る☆死怨♪。


 真剣に死を覚悟して宿敵を狩る。

 ソレが自分に課せられた使命である。

 例え志半ばで倒れたとしても。

 怨念として意識だけでも遺し後に続く者を支えたいと思う。

 ある意味、自分には、とてもあっている気がしてきたのだ。

 カウンターは、一秒刻みで目減りしていく。

 後、数時間もすればこの名前で確定するのだ。

 いっそのこと、ここで勝手に決定ボタンをおして確定しちゃいたい気分だった。


「もう、決めちゃおっかなぁ~」

「んぁ~。なんだ?」


 つい出てしまった呟きに隣に座った龍好が質問でこたえる。


「あ、うん。これが私達のチーム名なの」

「はぁ~! あんだよこれ!?」

「いい、名前でしょ」

「どこが良い名前だよ! こんなんじゃ誰も相手してくんねーぞ!」

「いいじゃない、べつに」


(どうせ、最後は孤独な戦いになるんだから……)


「よくねぇーって! 真剣狩るは、まだしも死怨はやべーって!」

「いいじゃない! どうせあなたは一緒にやらないんだから! 関係ないでしょ!」

「関係あろうが、なかろうが! んなもんかんけーねぇーんだよ! 誰が好き好んでこんな不気味な名前のチームに入るってんだよ!」

「ううう~。うちかわええって思ってつけたんに。たっくんのいじめっこぉ~……」

「げ……」


 すっごく悲しそうな栞の顔に龍好は怯んだ。

 この手の名前を付けるのが栞だってのは分ってた。

 異語同音の漢字が好きな栞らしいとは思う。

 だからといって今後、いらぬ批評を買う様な名前を冠にしてやっていくのは止めたいと思った。

 龍好自身いわれのない批判に傷ついた一人として…… 

 だから、提案した。 


「まぁ。ひらがなとかだったら。一緒にやってもいいぜ!」


 適当に言ったはずの軽口は一瞬で栞を元気にさせた!


「みらいちゃんっ!」

「OK! ひらがなで登録完了よ!」

「やった~! これでたっくんと一緒に冒険出来るよ~!」


 栞は、万歳して跳ね回っていた……


「あ、あぇ?」


 なんでなの?

 って顔している龍好に向かって。

 一つの目がにたりとする。


「さっき見せたのと別に、平仮名でも申請してたのよ」


 もっとも、こっちは私が申請っしたんだけどね。

 と、みらいは付け加える。


「はぁ~」


 龍好は、溜め息をはき。

 嬉しいような、諦めたような、腹をくくった様な笑みを浮かべる。

 年貢の納め時だと思った。

 どうせ、切っ掛け。


(違うな。言い訳が欲しかったのか……)


 そんな思いを心で呟く。


「まさか、とは思うけど」


 みらいは、栞に視線を送れと目配せして、


「あんなに喜んでる娘を悲しませたりしないわよね」


 分りきった事を聞く。

 この顔は既に覚悟を決めていると理解していた。

 でも、それでも。

 気持ちだけじゃない。

 言葉で言って欲しかったから。


「ああ。分ってる。栞。今夜からよろしくな!」

「ありがとーたっくん!」


 ぎゅー!

 っと栞が抱きしめると龍好の体は、軋む。


『いっってー』と龍好が叫ぶ前に。

 コレを予測していたみらいが流れる様に鞄を開け――茶色いスリッパを取り出して!


 ☆バシン☆  


 栞の頭を思い切り叩く!


「あんた! また龍好の骨折る気なのっ!」

「あう~。ごめんなさいぃ~」

「あははははは……」


 乾いた笑いを浮べる龍好の腕が暫く使い物にならないであろうことは察した。


「ったく! 嬉しいと制御利かなくなるの分ってるんだから、もっと気を使って行動しなさい!」

「はう~。ごめんなさい~」

「私は、いいから。今日も龍好の鞄持って行きなさいよ!」

「あう~。了解やぁ~」



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