3-37
その瞬間みらいの見る世界は半分に断絶され、規定よるペナルティ。
許容範囲外の技の行使が発生し強制ログアウトされるも、その口元は僅かに上がり勝利を核心していた。
死してなお友を守らんとする強き思い。
自身が死ぬ、もしくは同等の条件が整った時に発動する特殊スキル戦友の灯火だった。
それは、術者が死亡した時に発動し、残った戦友を援護するための技である。
みらいのヒットポイントはゼロになりながらもそこに存在し。
その隣には、子犬の様な緑色の物体が召喚されていた。
死亡扱いとなっているはずの、みらいの口が動く。
「時の反逆者アテライエルよ。我らが道ちに立ち塞がりモノを時の牢獄に幽閉せよ。グリーンレクイエム」
「キュイ――!」
その、鳥のようなかん高い声と共にボスの周りを薄い緑色の霧が埋め尽くし、エメラルドのかたまりの中に閉じ込める。
特殊術式、深緑の冥送曲だった。
ボスは動きを止め、固まっている。
それは、ほんの数十秒だけ許さた好機。
でも、それでじゅうぶん。
友の逝き様を看取る事なく背中で受けとめると全身全霊、想いの丈を渾身の一撃に乗せるために武器に換装。
「チェンジ! ビックオーガハンマー!」
唯一無二、最大級の大技発動条件の一つが整っていた。
条件一。
それは、相手が行動不能状態であることであり、技の開始から最後までの時間。
相手が動かずに待って居てくれるというテレビ特有のお約束。
それと同じ条件下でなければ当たり確率が一億分の一になってしまうのだ。
条件二。
こっぱずかしい唱い文句を唱い切ること。
これは、原作どおりでなく、オリジナルでもかまわない。
一定以上の文字数――正確には、時間を消費すれば条件を満たす。
ジャカジャン。
琴と三味線の効果音がなり響き辺ると――辺りいったいが闇に包まれ、栞だけに斜めからスポットライトが当たる。
時代劇風のバックグラウンドミュージックに合わせて、ゆらりゆらりと赤い花びらが舞い散る。
「儚く散った友の血を、
セットされたプログラムに従い栞のもつ本来の力が解放され規定通りに攻撃力を乗算させる。
そして力宿る言葉と共に、
「アルティメット! フォルテッシモー!」
全ての条件を揃え音を蹴り跳ばす。
地面は、崩落することを忘れ。
音は、唄うことを忘れ。
大気は、風になることを忘れた。
音速を超えた跳躍は完全にこの世界の理。
管理プログラムの許容範囲を逸脱していた。
巨大な金属の塊が圧壊し。
爆裂し終わって数秒――
ようやく追いついた処理システムが受けたダメージから数値を弾き出し地面を巨大なクレーター並にくぼませる。
荒れ狂う大気は、やがて大きなうねりとなり爆風となって弾け飛ぶ。
緑色の物体も、それに巻き込まれ、どこぞへと飛ばされていた。
轟く破壊音は大地と大気を揺るがせ、まるで世界そのものが崩落したかの様な錯覚すら感じさせる程に、このフィールドを揺るがせた。
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