3-27
右手側には、岩山がそびえ立ち。
左手側には、のどかな平原が広がっている。
地平線が見えそうなくらい見渡しが良く。
柔らかな緑が気持ちいい。
時折吹くそよ風と小春日和を思わせる日の光。
今日は、絶好のおさんぽ日和だった。
そんな中――
真剣狩る☆死怨♪(仮)一行は、無事にお使いクエストを完了し石畳の街道を歩いていた。
本日試験的に受諾してみたクエストは、街の外に出て遠方の農家にある小屋まで品物を届ける、といった内容。
今のメンバーレベル三人足しても届かないくらい高レベルのクエストなのに。
はっきり言って、すっごく簡単である!
報酬も多いし反復も出来る。
状況次第では効率的にキャッシュを増やす事が可能であった。
なぜ、こんな甘いクエストが存在するのか?
当然、相当の理由があるからである。
要因として先ず始めにあがるのは、大半の者が職業適性審査や一般教養テストすら受けずに、ここでの生活スタイルを見つけ。
この世界で楽しんでいるからである。
春の二大イベントが一つ。
桜祭りなんかがいい例だった。
遠方から人を集めるには、時間とお金。
それに手間、等々。
一生懸命やった割には残念な結果になってしまった幹事も多いことだろう。
しかし、リトライで集まれば別。
国内であり通信環境が整っていれば距離は関係ない。
ログインに掛かる費用1000円と運営が用意したショッピングセンターで服や小物を購入するだけで準備は完了。
そして、思い思いの人達と集まるのだ。
昔好きだった片思いの相手に会える同級会。
共に汗を流し甲子園を目指した元高校球児達。
離れて暮す、親子に孫。
他、もろもろ……
キャッチフレーズの、
【懐かしい思い出と、もう一度出逢える桜の木】
は、多くの年配者に絶大的な指示を得ている。
そんな人達が、街の外に出て屈強なモンスターと戦うだろうか?
せいぜい一部の『まだまだ若いもんにゃ負けんわい!』なんて言って骨と皮だけになったおじいさんが無謀にも大太刀を持って――その重さに耐えられず突っ伏すくらいのものである。
それらを筆頭に、街から全く出る気のない人々が9割を超えていた。
だが!
このリトライの基本概念は、モンスターを倒して遊ぶRPGゲームなのである。
だから新しい町、新しいダンジョン、新しいフィールド等々。
それらは、次々に実装されているのに殆ど見向きもされないという現実。
でも、やっぱり街の外に出て冒険やスリルを楽しんで欲しいという理由から、街の外に出て品物を届けるといった内容の、お使い系クエストは効率が良くなっているのだ。
だからといって、誰でもが簡単にそれらの甘い汁を吸えるわけではない。
それが、もう一つの要因。
第三勢力と呼ばれる山賊の存在だった。
彼らは一般プレイヤーであると同時にモンスターでもある。
街の近くや街道は衛兵がパトロールしているが万全ではない。
時として、山賊に襲われて身包み剥がされたという者も居る。
もちろんゲーム内容として認められた存在である以上――奪われた金品は帰ってこない。
だから、大抵の者は街の外に出る際には護衛を雇うのだ。
しかし、それでは貰った報酬では足りずに赤字になってしまう。
そこで、真剣狩る☆死怨♪(仮)一行は、護衛を雇わずにクエストに挑んでいた。
基本的に刹風のプレイスタイルに合わせて行動するという暗黙の了解があり。
もし、護衛を雇わなければならない様なモノならやる価値がないと判断したからでもあった。
この世界に来る前に危険視される項目ばかりを日々チェックしてきたみらいにとって、その判断は間違いだったと後悔する事になる。
もっと危険な者達は、ルールの外に居るのだから。
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