3-21
図書館での勉強会が終わる頃――
やる気になった栞の成果は、しっかりとでていた。
初歩の回復魔法だけとはいえ、完全に暗記していたのだ。
一方、刹風の方は、いまいち。
度々、単純なミスが目立ち――その度に、みらいから指摘を受けていた。
「って! ゆーか、あんた、よくその状態で私のめんどうみれるわよね!」
「そう? 間違えそうなところを先回りして想定しておけば、簡単な事だと思うのだけれど?」
「はいはい。そうですか。単純で、すみませんね」
「そんなことより、これからの事を話しましょう」
「せやな。みらいちゃんの言うとうりや」
「だったら、私も服が欲しいかな」
栞は、耐久性の高い回復術師見習いの服もどきだし、みらいは、ガチャの大当たり。
しかも、二人とも衣装に合わせて靴まで購入済みなのである。
栞は白いファーのついたショートブーツで。
みらいは、黒のパンプス。
履き心地はデフォルトのスニーカーと変わらないらしいのだが……
刹風だけがティーシャツにジーパンだった。
「そうね。一人だけデフォルトのままってのも味気ないわね」
「せやな」
「そこで、私的には、アルバイトしたいんだけど。いいかな?」
「いいんじゃない」
「みらいちゃんが文句いわんのなら、うちも賛成や~」
刹風は、すでに目を付けていたレストランの名前を口にする。
「フィッシュライフってゆー、レストランがあって、そこで、バイトしようと思うんだけど、どうかな?」
「そう言えば、案内係の人も言ってたわね、アルバイトするならレストラン系がいいって」
「うん。それで昼間調べて、ここなら良いかなって思ったんだよね」
「そんなら、そこいってみよ~」
「そうね、栞。手を引いてもらってもいいかしら?」
「了解や~!」
登校時と同じく、みらいは右手のみで仮想キーボードをカタカタさせている。
それを尻目に刹風は、
(ホント、みらいってすごいわよね)
なんて思いながら、街の中心に向かって歩み出したのだった。
*
「実は、デフォルトの服のままじゃアルバイトとかって出来ないんですよね~」
フィッシュライフに着いて早々にダメ出しを食らっていた。
「え~~~と。つまり先に何か服を手に入れないとダメって事なんですね」
「はい。そうなります!」
「スミマセン、出直してきます」
*
「せっちゃん。面接もう終わったん?」
「あいや、そのね……」
「なにか、問題でもあったのかしら?」
相変わらず、みらいは画面を見ながらキーボードをカタカタさせている。
「えとね、まずは服を着替えてからじゃないとダメなんだって」
「それは、つまり。制服を購入しろってことなのかしら?」
「ん~ん。制服とかは、ないみたいで私服でいいんだけど……デフォルトのだけはダメなんだって」
「じゃぁ、琴葉さんのお店に行って交渉してみましょう。栞、手を引いてもらえるかしら?」
「あんな、みらいちゃん。お姫様抱っこの方がええと思うんやけど」
「言われてみれば、そうね。よろしく頼むわ」
女の子が女の子を、お姫様だっこしているという状況は、それなりに人目を引いたが。
みらいがやっている意味不明な計算式を見ては、ドン引きしていた。
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