3-7


 みらいは 予定通り炎系統を主に操る魔法使いになった。

 対応してくれた、お姉さんからは、予想通り氷属性の適正値が高いから相応のマイナスポイントが発生すると忠告されたが押し通した。


「やっぱ、みらいちゃんは、お笑いの才能ないなぁ」

「あのね……栞。私としては、ベストマッチした職業が攻撃系統の魔法使いであることは非常に嬉しいのよ。正直、普通に喜んで欲しいところだわ」

「まぁ、いいんじゃない。当初の予定通りになったわけだし」

「そうね。それに、テストで満点を取ったご褒美で特別なスキルも得られるみたいだし」

「はぁ! そんなのまであるの!?」

「なんか、みらいちゃんばっかりずるしとるみたいや~」


 ――だったら勉強しなさい!


 と、言うのは簡単だが。

 ただ、それを言ったところで二人が真面目に勉強してくれるとも思えない。

 なにかきっかけが欲しいところではあるが……今は、スキルの選択が先だとみらいは判断し。

 問題は先送りにしたのだった。


「それでは、みらい様。改めて満点おめでとうございます! どれでも好きなスキルを選んでくださいませ」


 単純に、ヒットポイントやマジックポイントを増やすものから、意味があるのかないのか分からないモノまであり。

 それなりの種類の中から選ばなければいけないようだった。

 そこで色々と考えたあげく戦友の灯火ともしびをチョイスした。


「それでは、みらい様。使用できるスキルの一覧に戦友の灯火が追加されているか確認してくださいませ」

「はい。問題なく追加されています」

「ねぇ、みらい。それってどんな効果があるものなの?」

「実際のところ、たいした事も出来ないし、どちらかというと不人気なスキルみたいなんだけど、条件次第で無敵攻撃が可能になるのよ」

「なにそれ!」

「なんか、やっぱり、みらいちゃんばっかりずるしとるみたいや~」

「まぁ、欲しかったら二人ともレベル1の試験で満点とる事ね」


 栞と刹風は、「う~」とか「む~」とかうなっているだけでテストの成績を上げようと言う発想には、いたらないようだ。


 それどころか、今の話は聞かなかったことにして自分達の話を進める事にした。


「私はシーフ系でいきたいと思うんですけどどうですか?」

「そうですね。刹風様は、シーフの適正値も高いですし良いと思いますよ」

「や、りぃ」


 予定通り、お金が稼げるかもしれないと思うと笑みが浮かぶ。


「数ある職業の中でもシーフ系は、素早さに秀でていていますからね。その気になればかなりの速度で移動する事が可能になります」

「本当ですか!?」

「はい。使用可なスキルを確認して見てください」

「エッグ・オン。使用可能なスキルを表示して」


 刹風の見たソコには……


 とんずら、と書かれていた。

 しかもシーフの初期職業名は、こそ泥……


「早く走れるスキルってもしかして逃亡用ですか!? ってゆーか、こそ泥ってなんですか? こそ泥って!」

「名前に関しましては、普通にシーフ見習いでいいのではないかとの意見もあったのですが、こそ泥の方が面白いだろうと言うことで採用されました」

「なんでネタに走るのよ! 普通にシーフ見習いで良かったじゃない!」

「それに、とんずらだって、俊敏性上昇の魔法なので身体能力そのものの向上と思ってもらってもかまわないですし。かなり使えるスキルなんですよ」


 黒いメイド服を着こんだお姉さんは、どこまでもマイペースで、お仕事をしているだけだった。

 それに対し栞は、大喜び。


「いや~、やっぱせっちゃんはわかっとるなぁ」


 ぱしぱしぱしとハリセンではたく。


「すきるの、とんずらってのもおもろいしなぁ」

「あ~、もう! 笑いたければ、わらえ~~~~!」

「それでは、栞様。私的には、超重量級戦士をお勧めいたしますがいかがでしょうか?」

「うちは癒やし系がえぇの!」

「ですが、本来は近接格闘タイプの戦士系統における上級職であり、そうそうなれる職業ではありません。非公式ながら世界記録を持っているのですからもったいないかと……」


 さっきの仕返しとばかりに刹風もお姉さんの案を押す。


「そうだよ栞。せっかく上級職にいきなりなれるんだからもったいないって!」


 でも、栞は全力拒否!


「うちは回復系の魔法使いがえぇのっ!」

「では、まず栞様が回復系の魔法使いを選択なさった場合のデメリットについてお話いたします」

「あやや~! そんなんあるん?」

「はい、近接格闘における技に対しまして使用条件が厳しくなり、物理攻撃力の下方修正もされます。それから基礎知識不足によるペナルティにより最大マジックポイントが大幅に削減されます。ですので、魔法攻撃どころか肝心の回復すら全く出来ないなんちゃってヒーラーが誕生ということになりますが……それでもよろしいでしょうか?」

「そんなんいややあぁ~! 回復できひん、ヒーラーなんてネタにしかならんやん!」

「あはははっ! よかったじゃないあんた好みで!」


 お腹を抱えて大爆笑の刹風。


「うううう~。みらいちゃ~ん。せっちゃんがいじめるぅ~」


 栞は、みらいに泣きついた。


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