第二十話 話題の名店
「
どうやら、縁葉さんからの着信のようだ。僕は、応答する。
「はい、もしもし~」
『私だ。今、時間あるか?』
「ええ、用事ももうすぐ終わりそうですし」
『そうか。なら、その時間を少し私にくれないか?』
「…?」
『いや、何…。少し、班内での親睦を…とね。まあ、一緒にお茶でもどうかな』
「ああ、それならOKですよ」
『そうか、なら【スイーツのおみせ】という場所に来てくれ。ほかの二人も呼んである』
「りょーかーい」
通話を切る。
「どうしたんだい?」
「いや…、なんかお茶でもどうかって」
「そうか~、楽しんでおいで」
「はーい!」
ペガメントが、食い気味に声を出す。
「おっ!オレさまも一緒に行くぜ!」
「キミはダメだよーん⁇まだまだ、キミの『研究』がすんでないからねえ…‼」
「ヒッッッ⁉」
「あ、じゃあ僕はこれで」
ペガメントが、助けを求めて僕を見る。
「ああ…!オレを置いてかないでえ‼」
「ところで…、キミは射精とかできるのかなあ?」
僕は、ラボから退出する。
「ギニャァァァァァァァ‼‼‼」
なんか、聴こえたな。まあいいや。
◇
~VSキュアーが終わったあたりのこと~
ワタシは、
確かに、話題というだけあって、客足は多いみたい。今度、
「おお。話題というだけあって、なかなかの盛り上がりだな」
「そうですね。これは、期待できますね」
縁葉さんは、お堅いイメージがあるけど、意外とこういう場所やモノが好きだ。噂では、部屋にはぬいぐるみが、たくさんあるって話もある。なんか…、残念って感じだなあ。
そりゃあ、縁葉さんは美人だし、誰もが憧れるくらいかっこいい人だけど…、なんだかなあ…。そういうのに、グッとくる人もいるのかなあ?『ギャップ萌え』ってやつ…?
今だって、
「む…?【マカダミアナックル】…、【デモンズチョコレート】…?変わった名前だな」
「確かに。他には【エンジェルパーティー】とか、持ち帰り限定の【スタンプドロップ】とか…。あ、ドロップって
「
縁葉さんは、そばに居る店員を呼ぶ。
「お
「すまない。この…、【マカダミアナックル】を頼む。
「あ…、ワタシもそれで」
「では、これを二つ」
「かしこまりました」
店員は、注文を受けると奥へと入っていく。
「ふむ。楽しみだな」
縁葉さんも、黄瀬さんと同様、特にあの一件以来変わったという様子はない。何を考えているかはわからないけれど、まあいいかな。それに、今までだって上手くやってきたんだから、思ってることくらいでは揺らぐようなものじゃあないか…。実際、普段から口に出さなかっただけで、考えていたのは同じなんだから。
ま、そこまで気にすることじゃあないってことだよね。リラックス、リラックス。
そんなことを考えていると、注文していたものが運ばれてくる。
「お待たせしました。【マカダミアナックル】でございます。ごゆっくりどうぞ」
——これは…。
「まるで、岩だな。ナックルという名に恥じない、パンチのある外見をしているな」
マカダミアナックルの正体は、ロールケーキだ。その周りを、これでもかとナッツで覆われている。
「しかし…、こういうものは見た目では測れないものがある。いただこうか」
縁葉さんは、フォークを手に取り、その先をケーキに落とす。そして、そのまま口へと運び、
「ふむ。見た目に驚きはしたが、味は
ワタシも、一口食べてみる。
「わっ、おいしい」
確かに、格別だ。ナッツの触感が良いアクセントになってる。そして、さっき縁葉さんが言ってた通り、周りにナッツと一緒にコーティングされているのは塩キャラメルみたい。中のクリームの甘さと、塩キャラメルの程よい塩気…。この世に、これほどの組み合わせがあるのかな…?いや、無いんじゃあないかとも思えるくらいに、完璧な組み合わせだ。
「ふむ。話題になるのも
「確かに!こんなにおいしいなら、みんな教えたくなりますよ!」
「ふふ、そうだな。そうだ、
そう言い、縁葉さんはデバイスを取り出して、
『もしもし?』
「常好?今、暇か?良ければ、これから43班のみんなでお茶でもどうかと思ってな」
『おお~、ちょうど暇してたんだよ~。
「そうか。なら、今から【スイーツのおみせ】という場所に来てくれ」
『
黄瀬さんとの通話が終わると、次に
『
「ああ。この後、少しお茶でもと思ってね。今は、暇か?」
『…、ええ。少し立て込みましたが、今はフリーです』
「そうか。なら、【スイーツのおみせ】という場所に、今から来てくれ」
『わかりました。……、あの。もう一人、呼んでもいいでしょうか?』
「それは、構わないが、いったい誰だ?」
『いえその…、キュアーを。まだ、二度…、いや、三度も治療してもらった礼をしていないと思ったので』
「亜人嫌いのお前が、どういう風の吹き回しだ?まあいい、待ってるぞ」
『ありがとうございます。失礼します』
信との通話を終えると、次に、赤根君へと電話する。
◇
「お待たせしました」
「あ、どうも~」
俺は、あの後キュアーを誘って、縁葉さんの言う【スイーツのおみせ】という場所に来た。甘いものは、嫌いではない。
「黒川さん、遅いですよ~?」
「…、すまん」
「まあまあ、執くん。いいじゃない」
「ま、別にいいですけど~」
黄瀬さんと赤根は、先に到着していたようだ。
縁葉さんが、声を出す。
「とりあえず、座れ」
「あの~?ボク、本当にお呼ばれしてもよろしかったのでしょうか~?」
「ん、良いんだ。それに、これからも黒川が世話になりそうだからな」
「あ~…、確かに…」
——これからは、あまり世話にならないようにしないとな…。
俺とキュアーは、椅子を引き、そこへ座る。
「あ、黒川くん。何か落としたんじゃない?何かが、テーブルの下で光ったのが見えたよ」
「む?そうか?助かる」
どうやら、気づかないうちに何か落としたらしい。気を付けないとな。
俺は、テーブルクロスを持ち上げ、下をのぞき込む。確かに、何かが落ちている。何を落としてしまったのだろうか?
——あれは…。
赤いカセットテープ。
——⁉⁉⁉
「みんな離れろ‼」
「「「!」」」
俺がそう叫ぶと、全員一斉にテーブルから離れる。流石は、D.M.Sの隊員。行動が速いな…。…って、今はそんなことを考えている場合じゃあない‼
「どうした黒川⁉」
黄瀬さんが、質問するが、それよりも気になることがあり、それどころではない。
そのカセットテープはカチカチと音が鳴っているのだ。何か…、嫌な予感がする。そして、カチカチ鳴っていたかと思うと——
カチリ。
——これは…、やるしかない……‼
俺は、テープの上へと飛び込み、それを腹で抱える。その瞬間——
「⁉」
爆発した。
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