ロト777で777777777!⑩




―――・・・あれ?

―――物凄く見覚えのある場所・・・。


気付いて辺りを見回すと、どうやら自宅のようだと分かった。 


―――さっきまで俺は外にいたはず・・・。

―――やはり夢だったのか?

―――いや、どこか変な気分だ。

―――寝ていなかったことくらいは自分でも分かる。


「どうだったよ?」


首を回すと傍には福志がいた。 確かに先程まで一緒だったが、状況がまるで違う。 福志に連れられて自宅に戻ってきたというわけでもなさそうだ。 


「・・・福志?」


福志はハイテクなヘルメットのようなものを脇に置き、自身のパソコンを弄っていた。


「どうだった、って・・・。 何がだ?」

「何がって、今見ていた景色?」

「福志が何かやったのか?」

「俺の内定先のメーカーにテストしてほしいって渡されてな。 現実を基準にして俺の設定したシナリオを体験してもらっていたっていうわけよ」


そう言ってヘルメットをポンポンと叩いてみせる。 どうやらVRのようなものを見せられていたらしい。


「じゃあ、今朝飲んだ薬はそのための・・・」

「そうそう。 意識がハッキリしている状態だと駄目だからさ。 一種の催眠状態のようにしないと没入感が生まれないんだって」

「仕込みだったのかよ・・・。 怪しいとは思ったけど」


―――福志からもらったからって何の躊躇いもなく飲んだ俺も悪いか。

―――あの願望が全て叶う世界は福志が作った世界だったのか・・・。


そう考えていると福志が言った。


「無条件に与えられる幸せはつまらなかっただろ?」

「・・・まぁな」


あくまで勝利の感想である。 勝利は幸福を得られるまでの過程を求めていたのだと理解した。


―――期待する気持ちが膨らむから、上手くいった時のことが一入嬉しく感じられる。

―――現実へ戻ってきたのはどこかムズ痒いけど、福志が体験させてくれてよかったのかもしれない。

―――これで現実とちゃんと向き合うことができそうだ。


改心しているとケロッとした様子で福志が言った。


「ちなみに俺は酒池肉林のようなハーレムを体験させてもらったけどな!」

「ッ、はぁ!? 俺だってそっちの方がよかったって!!」

「勝利は彼女、と言っても元だけどいるじゃないか」

「そうだけど」

「それに無条件に与えられる幸せはつまらないんだろ?」

「ッ、まぁ・・・」


つい先程言った言葉のため撤回はできない。


「ちなみに俺は滅茶苦茶楽しませてもらいました!! この世の愉悦を味わわせていただきました!!!」


歯をキラリと見せ親指を勝利に向ける福志。


「コイツ、ムカつく」

「はっはっはっは!!」

「ははははは、はぁ・・・」


福志は楽しそうに笑っているが勝利は乾いた笑いしか出てこない。 確かにつまらなかったが、当たっていた5000万も元カノとの復縁も、全てなかったことになったのだから。 それを見た福志が言う。


「やっぱり願望の叶う世界の方がいいか?」

「・・・」

「宝くじなんて当たりっこないんだよ。 ああいうのは成功した人間がちょっとした高揚感を得るための娯楽に買うものだ。 物欲センサーってあるだろ?」

「分かった、分かったよ。 もう死にたいとか言わないからさ」


話が長くなりそうなため止めに入った。 それを聞いて福志は満足気に頷く。


「それならよし!」

「あ、そう言えばロト777の自由記入式の当選発表がそろそろかも」

「はぁ!? 全然懲りていないじゃないかッ!!」

「いや、もう既に買ってあるヤツだからさ」


テレビをつけると丁度抽選が行われていた。 福志もテレビに集中する。


『まさかこんなことがあるのでしょうか!? 9ケタの当選番号のうち8つが“7”!』


―――・・・7?


『まさにロト777にぴったりの当たり番号になろうとしています!!』


テレビを見ながら福志は笑っていた。


「何だこれ。 凄ぇ確率だな」

「・・・」

「こんな馬鹿みたいな番号記入する奴なんてこの世界に一人もいないだろ。 全て同じ数字を記入とか有り得ないって」


だが勝利は心臓が震えていた。 その馬鹿みたいな記入を正しくやった記憶があったためだ。


―――今の時点で既に5000万の当たりが確定している。

―――他に誰もこの番号を選んでいなくて最後も7だったら・・・。


ジッとテレビを見据える勝利を見て福志もどこか様子がおかしいと気付いたらしい。


「・・・勝利?」



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