ロト777で777777777!⑨
「ここまで来たら大丈夫だろ」
「はぁ、はぁッ・・・」
「大丈夫か?」
福志は背中をさすってくれている。 いつの間にか絵梨花とは分かれてしまったようだ。 ただ絵梨花は何も悪いことをしていないため、巻き込みたくないという気持ちがあった。
「あぁ。 助けてくれてありがとな」
福志が逃げ道を作ってくれたおかげで、何とか警察を撒くことができた。 逃げる必要はなかったのだが、逃げてしまったために逆に捕まると面倒くさいことになるだろう。
―――つーか、折角の金を持ってくるのも忘れちまったぞ・・・!
―――多分絵梨花が持っていると思うけど、まだ削っている途中の大量のスクラッチも。
―――まさか絵梨花に限って、持ち逃げしたりすることはないよな・・・?
悪い思考がぐるぐると回る中呼吸を整える。 そしてジッと福志を見た。
「「・・・」」
福志もこちらをジッと見据えている。 互いに見つめ合い数十秒が経過した。
「・・・どうして警察に追われていたのか聞かないのか?」
気まずさに耐え切れず勝利から尋ねかけた。
「あー・・・」
福志も気まずそうに視線をそらす。 福志なりに気を遣って聞かなかった可能性はあるが、このまま話題にされないのも嫌だったのだ。 だが福志は何も答えなかった。
―――何も聞かないならこれから俺はどのように接していけばいいんだよ。
―――いっそのこと聞いてくれた方が気が楽なんだけど・・・。
「・・・勝利さ。 流石に気付いたんじゃないか?」
「え?」
福志から口を開くのを待っていたが、それは望んでいた言葉とは違うものだった。
「気付くって何がだ?」
「この世界で何が起こっているのか」
「・・・は?」
福志の言葉は明らかにおかしかった。 確かに宝くじが当たったことは話したが、他のことは話していない。 そもそも何故“世界”なんて言葉が口から飛び出したのだろうか。
「宝くじの数字が人から集まってくるわけがないじゃん。 絵梨花さんの性格的に金につられてよりを戻すとか有り得ないじゃん」
「ッ、どうしてそれを・・・! 福志にはまだ話していないことなのに!!」
「ここは勝利の願望が全て叶う世界なんだよ」
「はッ、願望・・・? 世界って? まさか、やっぱり夢なのか?」
そう口にし何となく納得する自分がいた。
―――じゃあ今までのはただ運気が上がっただけじゃなかったのか?
ただどうもそうではないらしく、福志は首を横に振っていた。
「やっぱりっていうことは何か心当たりでもあったのか? だけど夢ではないよ。 夢では」
「それってどういう・・・」
「願望が全て叶う世界に来れて満足だったか? 幸せだったか?」
その言葉に少し考えてから首を横に振った。
「・・・いや」
「幸せじゃなかったのか?」
問いかけに小さく頷いた。
「どうして?」
「俺は何も頑張っていないのに、幸せがただどこかから入ってくるなんてつまらなかったんだ。
最初は何でも望むものが手に入って一喜一憂していたけど、次第にワクワク感がなくなって何をしても作業のように感じられた」
「・・・そうだな。 じゃあ本当に大切なものは何か分かったんだ?」
「・・・あぁ」
頷くと福志は嬉しそうに笑った。
「そっか。 ならいいんじゃないか? 一等で当たった賞金は悪いことに使っていないみたいだったし、勝利はやっぱり勝利なんだなっていうことが分かったから」
―――・・・あれ?
―――福志には賞金をどのように使ったのかも話していないはずだけど・・・。
「福志は一体・・・」
「勝利、上を見て」
「上?」
そう言われ頭上を見ると朝にも見た隕石を発見した。 やはり目を凝らせば何度見ても福志の顔に見える。
―――またあの時の隕石だ。
―――思えばあの隕石も嘘っぱちっぽいよな。
―――それにあの隕石は躊躇わずに俺の方へ向かって落ちてきているぞ?
―――・・・あれ?
―――このままだと俺たちは・・・ッ!?
「戻りたかったらアレに願うんだよ」
「え?」
「辛い現実に戻ってしまうけど、勝利にその覚悟があるのなら」
福志にそう言われ覚悟を決めた。
―――・・・そうだな。
―――この世界は確かに最初は幸せを感じられたけど、もうそれがなくなった。
―――この世界では充実感が満たされないんだ。
「俺を現実の世界へ戻してくれ!!」
そう願うとまた隕石が落ちてきて目の前が真っ白に光った。
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