ロト777で777777777!⑧
そわそわしている勝利に絵梨花が気付くのはごく自然なことだった。
「勝利くん? どうかした?」
「いや・・・」
「やっぱりさっきからおかしいよ。 何かあったの?」
―――もし宝くじのことだけだったら何も思わなかったのかもしれない。
―――だけど思い返せばお金を拾ったりソファーが現れたりと、あまりにも不思議なことが起き過ぎている。
―――俺は今どんな世界にいるんだ?
―――ここは現実世界じゃないのか?
無意識でチラリとテレビへと視線を向けてしまった。 それで絵梨花も感付いてしまったようだった。
「そう言えば、さっきロト777のニュースが流れていたよね」
否定する言葉が出てこなかった。 そもそも自分自身何がどうなっているのか分かっていないのだ。 もしニュースで言っていたことが本当だとして勝利に何の責任があるというのか。
私が皆さんの“7”を奪いました、と言ったところで誰も信じないだろう。 それでも当の本人となると気にしないわけにもいかないのだ。
「・・・テレビに出ていたのって今削っているこれのこと?」
「・・・」
絵梨花はゆっくりと視線を勝利に向けてきた。
「もしかして、勝利くんが自信満々だったことと何か関係してる?」
絵梨花がそう言った瞬間、周りの視線が突き刺さった。
「あの人が一等を当てた人ですって!」
「じゃあ、今彼の傍にあるあの紙の山はもしかして宝くじか!?」
ひそひそと勝利を見て何かを話している。 ただ周りからしてみればその大量の宝くじがあるため、1位が当たったのも何となり納得できるという思考になっていた。
もちろん勝利はそんなことを知るはずもなく、どこか非難されているような気分になってしまった。
―――いや、俺は何もしていない!!
―――不正なんて、そんなッ・・・!
実際に何もしていないのは確かなのだ。 それにもし他の人の当たりが自分に集まっているとして、どうすればよかったというのか。
―――もし仮にこのことを話したとしても、警察は信じないだろ!?
他の人たちの当たり券は合計しても数千円にも満たないようなものだ。 なのに勝利が当てたのは5000万円。
―――7が集まってきたとか、そういうレベルではないじゃんか・・・。
とはいえ心当たりがあり過ぎて不安になるのは事実だ。 もし夢ならここらあたりで冷めてほしいと思うが、夢か現実かくらいは分かるもの。 身動きが取れずにいると遠くから声が聞こえてきた。
「あ、いました! あの方です!!」
「ッ!?」
声の方を咄嗟に見ると、そこには二人の警察と宝くじで受付をしていたおばちゃんがいた。
―――本物の警察だって!?
「あの方が今日の正午にスクラッチで一等を当てた方で――――」
警察と売り場のおばちゃんは走って近付いてくる。
―――マズい・・・ッ!
「あのー、すみません。 ロト777の宝くじのことでお尋ねしたいんですがー・・・」
警察が喋っている途中で勝利は立ち上がり、この場から走り去った。 別に追及されても何の問題もない。
何の問題もないが、少しは後ろめたい気持ちがあるため、警察に詰め寄られると逃げたくなってしまったのだ。
「勝利くん!?」
突然の行動に絵梨花は驚くも今は説明している時間はなかった。
「あ、待ちなさい!!」
警察は追ってくる。 逃げれば追いかけてくるのは当たり前だ。 そのせいで余計変な疑いをかけられるだろう。
―――恐怖のあまり、つい逃げちまったよ・・・ッ!
―――でも仕方ないだろ!?
―――俺は確かに何もやっていないけど、確実に俺が怪しまれるヤツじゃないか!!
警察に捕まるのが怖くなり逃げた。 思えば自販機からもお金を拾って自分のものにしているため、それも見つかると非常にマズい。
―――・・・いや、それこそ考え過ぎだ。
―――お金を見て判別できるはずがないんだから。
しかし後ろめたいことが大量にあるのは事実で、そのような時に警察に追われれば逃げたくもなってしまうものだ。
―――でもどうする?
―――このまま逃げられる自信はない。
―――俺はこのままどうしたら・・・!?
走っている途中で見覚えのある姿が見えてきた。
「・・・ッ! 福志!!」
「ん?」
逃げた先には運よく福志がいた。 福志は身体を傾け勝利の背後を見る。
「どうした? 警察に追われてんのか?」
「お願いだ! 助けてくれッ!!」
「・・・」
福志は少し悩んだ挙句グイと勝利の腕を引っ張った。
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