ロト777で777777777!⑥
二時間かけて昼食を終えた頃には夕方になっていた。 ほとんど残してしまったのが勿体ないが、その後悔が勉強になったと思えば未収穫でもない。 それにその味は本物だった。
「お腹いっぱい」
「満足か?」
「うん、凄く満足!」
幸せそうに笑う絵梨花を見ると勝利も幸せな気分になった。 少し余韻に浸りたいが、現在の運の持続力が不明なことを考え、早速二人は宝くじ売り場へと向かった。
今日一日の幸運を絵梨花には既に伝えていて、それを根拠に宝くじを買うと説得した。
「流石に当たりがゼロはないだろ。 それなりの金はもらえるはずだ」
「凄い自信だね。 私は150円すら当たったことがないけどな」
―――俺だって今までは購入額の方が当選金より高かったんだ。
―――でも今回もかなりの数が当たる気がする。
―――絵梨花に当たった時の嬉しさを味わってもらうことができるぞ。
今回は一枚だけでなく100万円分くらい購入しようと思っていた。 それ以上になるとスクラッチの特性上削るのが大変過ぎる。
1枚削るのにどんなに早くて10秒だとしても、3000枚を超えるスクラッチとなると9時間以上かかってしまう。
「そうだ。 毎回宝くじを買い占めていれば無敵じゃないか? たくさん買えば大金が当たるだろうし、金は尽きないだろ?」
「どうだろうね?」
「当たったら絵梨花にもやるよ、半分くらい」
「いいよ、そんな! デートの時に私を楽しませてくれるだけで十分」
「そうかぁ?」
宝くじ売り場へと着いた。 販売員のおばちゃんは先程の人と同じだった。
―――何か、気まずー・・・。
―――一度大金が当たったんだからもう買うなっていう顔をしてんな。
―――でも金がたくさんある奴がここに来るからこそ儲かるんだぞ?
流石に一等を当てた人は憶えているのか、勝利の顔を見るなり挙動不審な態度を取っている。 それが何となく癇に障り、予定を変更することに決めた。
「あのー・・・。 ここの宝くじって全て買い占めることはできますか?」
「全てですか!?」
「はい」
「できますけど・・・」
「できるならお願いします」
ということで今売っているもの全てを買い占めた。 券はザっと数えても一万枚はあるだろう。 重みから紙袋の紐が千切れそうになっている。
「かなりの量だな。 重てぇ・・・」
「一度家に持って帰る?」
「んー、そうだな。 いや、家に帰るのはまだいいや」
「じゃあどうするの?」
「スクラッチなら今でもできるからさ。 一緒に削ってみないか?」
「いいよ!」
パラソルのあるベンチを探し二人揃って腰をかけた。
―――絵梨花にとってくじが当たるのは初めてということになるのか。
ここは大きなビルに大きなテレビも付いており人通りが多い。 こんなに人目に付くところであれば、誰かが盗んでもすぐに見つけられると思ったのだ。
「これを全て削っていけばいいんだね?」
「あぁ。 もし削って7の数字が出たらこっちの袋の中に入れていってくれ」
「分かった。 そんな簡単に出るものかなぁ・・・?」
二人揃ってスクラッチを削り始める。 その途中で喉が渇いてきた。
「ちょっとあの移動販売車で飲み物を買ってくるわ」
「うん、行ってらっしゃい」
絵梨花を置いて移動販売車へ向かう。 列が少しできており最後尾に並んだ。 その時にさり気なく周囲を見渡す。
―――・・・何かみんな、楽しそうに笑ってんな。
―――俺よりも持っている金が少ないだろうに幸せに笑っている。
―――俺の方が裕福な生活を送れるというのに。
―――スクラッチは削り始めたばかりだけど、あとどのくらいあるんだ?
―――まだ数枚しか削っていないけど、何か作業に感じられて億劫なんだよな・・・。
―――どうしてだろう?
―――スクラッチをするのは今日が初めてじゃない。
―――普段ならもっとワクワクしながら削るのに今はその感覚がない。
―――どうしてだ?
―――俺は今こんなにも幸せ者なんだぞ?
―――お金にも恵まれて、可愛い彼女もいて。
―――なのに、どうして・・・。
―――どうして降って湧いた幸せって、こんなにもつまらないんだよ。
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