ロト777で777777777!④




何度見ても7が9マスに書かれた当たりくじが手の中に納まっている。 見本でしか存在しないと思っていたそれが、現実に目の前にあるのだ。

自身の限界を超えた幸運、それがもたらす意識のぐんにゃり感がこれを夢じゃないと確信させてくれる。


「おばちゃん!! 当たりましたッ!!」


すぐさま宝くじの受付の人に見せる。


「いやぁ、長年売り場をやっているけどその場でスクラッチの一等が出たのは初めてですよ! 当選おめでとうございます!!」


この後はすぐに口座へ振り込まれることになった。 本来銀行へ行ったりと面倒な手続きがあるが、それが省かれているのがロト777のスクラッチのいいところでもある。

とりあえずお金を下ろしギャラリーの人たちに10万円ずつプレゼントした。 10人程集まっていたため100万円にもなったが、幸運をもらったと思えば安いものだ。


「本当にもらってもいいんですか!?」

「あぁ。 応援してくれたおかげだ」


―――でも当たった直後ってどうしたらいいんだろうな?


流石にそれ以上は何かするわけでもなく勝利は福志に連絡を入れた。


『もしもし、どうしたー? 俺を放っておいてよー』

「俺当たったんだよ!」

『当たったって何が?』

「スクラッチ!!」

『何等?』

「一等!!」

『一等!? マジで!? 凄ぇじゃんッ!!』

「俺今日ツイてると思ったんだよ!!」

『いや、朝に不合格の通知が来ていただろうが』

「それ以降だよ! 本当に運気が上がっているんだ!!」

『へぇ。 じゃあこのまま新しい彼女でもできちまうかもな?』

「彼女?」


そこで元カノの絵梨花(エリカ)の姿が頭を過る。 絵梨花からの別れ話だったため、勝利は未だに絵梨花のことを好きでいた。 そして、その理由が将来の悲観や経済的なものだと思っている。


―――もしかしたらよりを戻せるかもしれない・・・?

―――でも流石にそんな都合のいいことは・・・。

―――でも今の俺の運気なら有り得るか・・・?


そのような期待がむくむくと湧いてくる。


『まぁ、とりあえず無駄遣いはしないようにな?』


―――今更そんなことを言われても・・・。


そう言われるとお金を配ったことが悔やまれる。 ただ他の人の運気を吸って当たったとすれば、お賽銭のようなもので必要な気がした。


「おう、分かった」

『あと当選だけで安心しないでちゃんと就活はするように』

「お前は俺の母親かよ。 今はこの夢のような幸せをぶち壊すなって」

『悪い悪い。 とりあえず羽目を外してはしゃぎ過ぎるなよ?』

「あぁ、気を付ける」


それで福志との通話を切った。 福志にはああ言われたが、福志に幸運のお裾分けは必要だ。 しかし今は電話で話に出た元カノのことで頭がいっぱいだった。


―――彼女、か・・・。

―――絵梨花って今どうしているんだろう?

―――今の向上している運気のままならワンチャン・・・。


そう思った時には連絡先を消せないでいた絵梨花に連絡していた。


『・・・勝利くん? どうしたの?』


正直な話、すぐに繋がるとは思ってもみなかった。 ただ久々の声を聞き、驚きよりも嬉しさが勝っていた。


「あ、あのさ! 今から出てこれないかな?」


声が上ずってしまうのは仕方のないことだろう。 絵梨花に不審がられたかもしれないが、突っ込まれることはなかった。


『・・・どうして?』

「ちょっといいことがあって。 まだ内定祝いしていなかっただろ? 元カレの最後の願いだと思って聞いてくれないか?」


そういうことで何とか絵梨花を連れ出すことに成功した。 30分程待った頃、絵梨花がやってきたが、やはり隣で気まずそうにしている。


「何でも買ってあげるよ。 高いものでも何でも来なッ!」

「気持ちは嬉しいんだけど・・・」

「気持ち、そう気持ち! 純粋にお祝いしたいっていうだけで、それだけだから!」

「・・・うーん」


あまりに突然の提案なためか、絵梨花は気後れしており何がほしいなんて全く言わなかった。 当然と言えば当然なのかもしれない。 振った相手に気前のいいことを言われれば警戒しない方がおかしい。

ただ勝利はそれを自分に気を遣ってのことだと思っていた。


―――今俺たちは付き合っていないというのにとことん優しいんだな。

―――まぁ、絵梨花は金目的で人を選ばないということを知っているけど。


そのため勝利が見繕い好みそうなもので上等なものを選び買ってあげた。


「・・・本当にいいの?」

「あぁ。 俺からの気持ちだよ」


―――これで絵梨花は俺のことを見直したり・・・?

―――流石にそう簡単にはしないよなぁ。


それを繰り返しているうちに絵梨花は俯きながら勝利の袖を引っ張ってくっついてくるようになった。


―――え?

―――・・・これはもしかして脈あり!?



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