ロト777で777777777!②




勝利がゆっくりと目を開けると、そこには青空が広がっていた。


―――あれ?

―――一体俺は何をして・・・。

―――確か隕石が直撃して死んだんじゃ・・・?

―――だけどどう見てもここは天国には見えない。


特に怪我もなく辺りに隕石の傷跡があるわけでもない。 先程立っていた場所と全く変わらない場所で、隕石騒ぎで住民が慌ただしかったはずが、今は影も形もない。


―――白昼夢っていうヤツか?

―――まさか就活の失敗続きで精神に異常をきたしている・・・!?

―――・・・俺も疲れてんだな、帰って休もう。


そう思いそのまま家に帰ろうとしたところ、やたらと喉が渇いていることに気付いた。


―――・・・あれ?


先程買ったはずのジュースがどこにもない。 飲む前になくなってしまったことが悔やまれた。


―――周りに落ちていたりしないよな・・・?


そう思った途端、自販機を発見した。


―――自販機?

―――こんな場所にあったっけ。

―――新しく設置されたのか?


丁度よかったためポケットから財布を取り出した。 その時に大変な問題に気付く。


「・・・あぁッ!? 財布の中身がねぇじゃん!! 白昼堂々盗まれたーッ!!」

「どうかされました?」

「あ、いえ・・・」


通行人に不審がられる程声を上げてしまった。 ただこれだけ不幸が重なれば咆哮したくもなるというもの。 更に言うならその咆哮がよくなかった。


―――・・・つかマズい、このままだと喉が乾いて死にそう。

―――折角目の前に自販機があるっていうのに・・・ッ!

―――俺はこのままここで渇き死ぬのか!?


望みは自販機の釣銭の出口。 獣のように目を血走らせ、乾きに乾いた喉を潤すために自販機にへばり付いた。 そして釣銭の出口に指を突っ込み見つけてしまう。


―――これは・・・ッ!


命を繋ぎ止めるための水分を購入することのできる金属片を見つけた。 取り出してみると500円が手の中に収まっていた。


「マジで!? 超ラッキーじゃん! お釣りを取ったつもりが500円だけ取り逃していたんだな? 一番価値のある硬貨をありがとうございます!!」


先程自販機を使ったのが自分のため、それは自分が取り忘れていたものの可能性が高い。 いや、自販機に見覚えがないためおそらくは違うのだ。

ただ今は倫理観とか法律だとかを気にしている余裕はなかった。 それにそれ以前に勝利は財布を盗まれている。 捨てる神があれば拾う神がある。

厳密に言えば財布のお金は捨てたわけではないし、その500円玉も捨てられたわけではない。 しかしそういうものなのだ、ということで、炭酸飲料を拾ったお金で購入する。


「・・・いやでも、財布にはそこそこ金が入っていたんだけど。 このまま放置するわけにもいかないよな。 警察にでも行くか・・・?」


そう考えながら受け取り口で手を伸ばしたその時だった。 自販機と地面の間の空間にチラリと紙切れのようなものが見えたのだ。


―――あれって・・・!


拾ってみるとお札だった。


―――五千円札!?


周囲を確認し咄嗟にポケットの中へと隠してしまった。


―――うわ、何隠してんだよ俺・・・ッ!

―――普通は警察に届けないと駄目だろ!?


そう思うも一度ポケットに入れてしまえばもう外へ出しにくい。 それに辺りには誰もおらず、見られた様子もない。


―――・・・まぁ、いいよな?

―――ポケットに入れたところは誰にも見られていないし。


財布からはお金がなくなっていて、それがおそらくは5000円くらいだったと思える。 同じお金ではないが勝手に入れ替わったということにし、警察へ行くのは取り止めた。

お金を盗まれたのに、拾ったお金を警察に届けるというのは心情的に難しい。


―――まずは喉を潤さないとな。


炭酸を掴みその場で蓋を開け飲もうとする。 勝利のストレスが溜まった時の発散法に、たっぷり炭酸飲料を2分程振ってから溢れる泡を口に直接注ぐというものがあった。

色々とあったがやはりこうするに限るとプルタブを開け、缶を口にセットした瞬間、何かが自分にぶつかりよろけた。


「うぉッ!?」


炭酸は絶賛吹き出し中のため手も口も離せない。 上手いこと地面に倒れることができれば。 そう思ったのだが勝利が地面に倒れることはなかった。


「・・・ん?」


ふかふかの肌触りに身体の沈み込む感覚。 一通り缶の中身を飲み確認すると、何故かソファーに座り込んでいた。


「え? どうしてこんなところにソファーが? さっきまでこんなところにあったっけ?」


捨てられたにしては綺麗過ぎる気がする。 そうなると誰かの持ちものなのかもしれない。


―――まぁ、いいか。

―――路上に放置しているのがいけないんだし。


今はその座り心地に身を任せ束の間の休息を楽しんだ。 先程までなかったはずのソファーがある謎には気が回っていなかった。


―――にしても暑いなぁ。

―――もう秋だというのに残暑が凄い。

―――もうちょっと涼しくなってくんねぇかなぁ。


その時偶然タイミングよく自分の周辺だけ影が差した。 広がった青空に唯一灰色の雲が快適な日陰を提供してくれている。 まるでスポットにかかる日傘のように一気に気温が下がり涼しくなった。


「んん・・・?」


流石の連続の出来事に勝利も何かに勘付いた。


「・・・何か俺、ツイてる?」



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