悪魔
「あー!私の好きな男でもいないかな」
樋口は切に祈っていた。樋口は、いつもと何も変わりがない毎日に少し退屈していた。「どこにいるの。私の恋人は!」と。
樋口は、つい大きな声で叫んでしまった。樋口の顔が赤面していた。
樋口は、思っていることははっきり言ってしまうタイプの人間である。だが、消極的な考えの持ち主だった。そんな樋口の前に男が現れた。男は、樋口に道を聞いた。
「すみません。この辺に公園はないですか?」
樋口は男に聞かれ後ろを向いた時だった。樋口の後ろから後頭部をめがけてスパナで殴った。樋口は突然襲われその場に倒れた。男は、樋口が気絶していることを確認すると新宿歌舞伎町まで男の運転する車に乗せその場を去って行った。後部座席に横たわっている樋口の方をバックミラー越しに見ながら男は新宿歌舞伎町にある廃ビルに向かった。誰も来ていないこと確認して樋口を担いで廃ビルの中へと入って行った。樋口のうつ伏せにしそして、後頭部を執拗に殴り続けた。脈絡がないこと確認すると仰向けにし、両方の目玉を抉りとった。そして男は目玉を一個ずつたべた。男の涎が口の中から溢れ出てくる。男は満足していた様子で涎を左手で拭った。男は、目玉を食べる行為が唯一の至福のひとときである。男は急いでその場を去った。誰にも見られて居ないかを確認した男の表情は笑顔だった。
「これでしばらくは大丈夫」
男は急いでその場を離れた。男は男の頭の中のモヤモヤ感が抜けていった。男のことは誰も知らない。俺のことなど放っておいてくれ。誰にも俺は感謝されたくないんだ。そうやって生きていくと決めた。男には頼りになる身内などいない。男には父親が居た。父親から勘当されたのだ。父親役方から一方的に。男は行くところがないから地道に仕事をしてきた。
「男に対して父親は勘当された理由を自分で考えなさい」
父親は男のあまりにも身勝手な行為に愛想をつかした。男は誰も知らない場所に行った方がいいと判断した。男と父親の中に亀裂が生じた。男は何も悪いことなどしていない。「悪いのは父親だ」
そうやって男はいつも生きてきた。父親は息子がいつも問題を起こしていることを指摘しなかった。そのせいか男は自宅に塞ぎ込みがちになっていた。誰とも関わろうとしない。父親は息子に対して過度の愛情を注いでいた。息子は、夜な夜な外に出ている。
「ウチの子に限って。だいそれたことはしない」
父親はそう勘繰っていた。父親はアルコール依存症で入退院を繰り返している。一人息子である男は自宅に塞ぎ込みがちになっている原因であるのは父親のせいだと考えるようになった。男はそろそろ家を出たいと思い誰も知らない場所での生活をしてみたいと考えていた頃だった。男は父親が居ない時に金を持って出ていった。男はこれで自由の身になれる。
「もう父親のことなど知らない。俺は俺の人生を生きていく」
男はこれで父親がいる場所には二度と帰らないと胸に誓った。男は父親の家が気にならないわけではない。男の脳裏には父親の大きな背中を見ていたことが懐かしく感じていた。父親を超えてやる、男の中に闘志が燻っていた。父親を超えようと簡単に話すが男の父親は有名人だった。簡単なことではない。父親が有名人だから、男には多少なりとも不安はあった。
「不安がない方がおかしいんじゃないか?」
男の考えだった。男の父親は有名な人だった。また資産家でもあり、男は裕福な生活を送っていた。男と父親が比べられることが多々あった。男と父親が比べられいつも同じ話を男は聞かされていた。男は比べられることは慣れっこだったが父親とは比べられることが嫌だった。人一倍以上こだわりが強く負けず嫌いだった男は人との会話がうまくいかなかった。
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