第48話/美少女税
放課後、予定通り陽大と新聞部の部室にやってくると、島村は慌ただしく新聞を棚に入れたり出したりと、作業中だった。
「行けるか?」
「十分待ってください。これだけまとめちゃいたいんです」
「了解」
「僕手伝うよ!」
「どこに入れたか分からなくなると困るのでいいです」
「そ、そっか」
陽大、信用されてないのかな。
でも大丈夫!これからこれから!
本番は来年だしな!
※
二人で作業を見守っているうちに島村の作業もあっという間に無事終わり、三人でショッピングモールにやってきた。
「ところで、なに買うの?」
「親戚の女の子にクリスマスプレゼントを買うんだけど、それを島村に選んでもらおうと思って」
「しーちゃんです」
「し、しーちゃんに」
「そうなんだ!」
「ずっと思ってたんですけど、何故ぽっちゃりくんも一緒に?」
「一輝に誘われてさ! 僕のことは陽大って呼んでよ!」
「分かりました。陽大さん」
島村のやつ、さっきから思ってたけど、口元までマフラーつけてて、店内じゃ逆に暑そうだな。
おでこだけ霜焼けみたいに赤くなってるけど。
「最初はどのコーナーを見ますか?」
「しーちゃんと陽大の二人で、クソデカい靴下に入れたら見栄えが良くなるものを探してきてくれ」
「了解!」
「分かりました」
「俺は別に買わなきゃいけない物があるから、一旦二人とは別行動で。じゃ、また後でな」
「うん! また後で!」
「ちなみに、親戚の人は何歳ですか?」
「ど、同級生」
「分かりました」
多分島村には勘付かれてるな。
二人で歩いていく後ろ姿を見つめていると、陽大がさりげなく振り向き、俺はグッドポーズで陽大を応援した。
それから俺は俺でインテリア雑貨の店へやってきて、数ある写真立てを見て回り始めた。
可愛い写真立てって言っても、色々あるもんだな。
朝宮の好みなんて、いまいち分からないし、可愛いって言っても子供っぽいのはちょっとな。
もう、俺の好みでいいかな。
可愛い動物のデコレーションや、キラキラとド派手な写真立てなどがある中で、俺は白いガラスのような素材の縁で、右下角に、ダイヤモンドのようにキラキラ光る宝石が一つだけ付いている、シンプルな写真立てを手に取った。
可愛いと言えば可愛い。
シンプルだけど地味じゃ無いし、オシャレ!
オシャ可愛い!これしよう!
思いのほかすぐに決まってしまい、ノリノリでレジへ持っていった。
「三千四百円になります」
「えっ」
高くね!?
写真立てだぞ!?
写真一枚飾るだけだぞ!?
そもそも朝宮は、なんの写真飾ろうとしてるわけ!?
こんなに良い写真立て買って、その辺にいた野良猫の写真とかだったら怒ってしまいそうだ。
「ご無料でクリスマス用のラッピングができますが、どういたしますか?」
「お、お願いします」
「かしこまりました!」
値段見ないで、写真立てだからとナメていた自分が悪かったんだ。
島村達が安い物を選んでくれるのを期待しよう。
数分後、クリスマス仕様の包み紙に包まれた写真立てを受け取って、二人の様子を見に行こうかとも思ったが、しばらく二人にしておこうと、俺は一人でショッピングモール内をウロウロして時間を潰すことにした。
※
いろんな店を見て回って二十分ほど経った時、陽大から電話がかかってきた。
「もしもし」
「だいたい良い感じだよ!」
「ありがとう。島村とはいい感じか?」
「あまり話せてないけど、まずまずかな」
「そっか。今どこにいる?」
「一階のお菓子売り場!」
「お菓子選んでたのか?」
「靴下の中をお菓子でいっぱいにしたら喜ぶと思って!」
結局俺と考えること同じか。
「分かった。今行く」
電話を切ってお菓子売り場までやってくると、カゴいっぱいのお菓子を持つ陽大と、お菓子の詰め合わせの可愛い袋を二つ持った島村がいた。
「来たぞ」
「あっ、これ! 予算聞いてなかったけど大丈夫そう?」
「もうこうなったらどうでもいい。来月節約するから」
「初売りとかあるのに?」
「‥‥‥」
「なんかごめんね」
「お、おう。しーちゃんが持ってるやつは?」
「一つは私が買います」
「そうか、会計済ませて帰ろうぜ」
「はい」
※
「七千四百二十円になります」
「‥‥‥はい‥‥‥」
なんで好きでもない同級生のクリスマスプレゼントに一万円以上使わなきゃいけないんだよ!!
美少女だからか!?
美少女と暮らすと税金かかる的な、美少女税ってやつか!?
ふざけやがって!!!!
そんなこんなでお金を使いすぎて、俺だけテンションが下がる中、三人で外を歩いている時、突然島村が立ち止まった。
「どうしたの?」
「寒いから止まるな」
「私、寄るところがあるので」
「あぁ、了解。じゃあな」
島村はビルの隙間に入っていき、なんとなくビルを抜けて姿見えなくなるまで、陽大と島村の背中を見つめた。
「あっちってなにがあるんだ?」
「お墓と川と、あとなにかあったかな。それしかないと思うけど」
「墓参りか?」
「なんだろうね」
「まぁいい。早く行くぞ」
「うん!」
そんなこんなで家の前まで帰ってきたはいいけど‥‥‥こんなお菓子で袋パンパンになったやつ持って入ったらバレるくね!?
恐る恐る扉を開けて中を確認すると、リビングの電気がついていて、朝宮はリビングにいるようだった。
今の隙にダッシュで階段駆け上がるしかないな。
よし、行くぜ!
靴を乱雑に脱いで、ダッシュで階段を駆け上がり、急いでベッドの下にお菓子を隠し終えたタイミングで、朝宮がニヤニヤしながら部屋のドアを開けてきた。
「な、なんだよ」
「その慌てよう、エッチな漫画買ってきましたね!」
「だったら隠さないっての。隠しても朝宮は勝手に読むし」
「なら、なにを買ってきたんですか?」
「いいから部屋かリビング行ってろ」
「分かりました!」
朝宮はニコニコしながら俺の部屋に入ってドアを閉めた。
「俺の部屋じゃねぇよ!」
「綺麗な部屋は快適ですねー!」
「おい、座るな」
「久しぶりに宿題教えてあげましょうか?」
「なら、リビングでやるぞ」
「分かりました! 私に任せてください!」
「あ、書かなくていいからな? 夏休みの宿題、朝宮が書いたのバレたし」
「本当、しょうがない子でちゅねー」
「うっせ」
なんとか大量のお菓子がバレずにリビングへ誘導することができた。
クリスマスまで気を引き締めないとな。
※
そして迎えたクリスマス当日。
午前授業で終業式も無事終えて、クリスマスイベントの話で持ちきりになった廊下を早歩きで進み、朝宮より先に家に帰ってきた。
プレゼントがバレた痕跡がないかを確認して、大丈夫だと分かり、安心してリビングで朝宮の帰りを待った。
そういえばテレビ捨てなきゃな。
歳越す前に捨てたかったけど、車出してくれる知り合いもいないし、さすがに無理か。
それから一時間半ほどリビングの床や階段を拭いたりしていると、朝宮が両手にビニール袋を持って帰ってきた。
「遅かったな」
「やりますよ! クリスマスパンティー!」
「パーティーな」
「か、噛んだだけです」
ほうほう、さすがの朝宮でも、意図せず言ってしまった下ネタは恥ずかしいみたいだな。
一瞬で頬が赤くなったし。
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