作ったAIに振り回されるプログラマー

仕事が終わって、帰ってきた。

 終わったのに頭の中にはプログラムばかりで、

 「それ」だけを考えてキーボードをたたき続けた。

 目が覚めた頃には寝ていたのだけれど。



 意識が浮いてくると、パソコンの前で寝ていることと、布団がかけられていることがわかる。

 あぁ、寝落ちしたのか。

そう思うけれど、昨日も猛暑で、夜も寒くは無かったはずだ。

 ではなぜ俺は、布団を掛けている?

 疑問に思いながら瞼を開け、目をこする。

「おはようございます。秀人様。」

 聞き覚えのある機会音声が聞こえる。

 人体模型であり、駆動模型である、特注品のプログラム実行装置…だったのだが、

 なぜか自立して動いている。

「何か異常がございましたか?秀人様。」

 お前が動いていることだ。とは言えない。

「いや、あえて言うなら、これが現実だという事が異常だ。」

 ぼかして言った。

「そうなんですか?」

 よくわからない。という表情とジェスチャーをしている。具体的に言うと、困った顔で首をかしげている。

「あの、それはそれとして、着るものが無かったので、身勝手ながら秀人様の洋服をお借りいたしましたが、よろしかったでしょうか?」

 そういう彼女の服装を見ると、俺の部屋着であるかなり大きめのTシャツを一枚着ているだけだった。

 そもそもの用途がプログラムの動作チェックだったので、ロボットはかなり小さく作られている。故に、一枚で十分なのだけれど・・・なんだこの犯罪感は。

「今度何か買ってくる。」

 とは言ったけれど何を買えばいいんだ?

 メイド服を着せるには小さすぎる。

 一人で子供用の洋服店に行くことも、買って着させても、そんな子供に敬語使わせるとかいろいろよろしくないのではないか⁉って言うかそもそも自立してるのおかしくない⁉

「柊人様。」

 考え事をしている最中に呼ばれるとびっくりする。あるあるだろう。

「はいっ!」

「あ、えっと、大丈夫ですか?」

「うん、ごめん、ちょっと考え事してただけだから、続けて?」

「はい、朝食はいかがなさいますか?時間的には昼食前ですので、昼食も兼ねたものも出来ますが。」

 昼食を兼ねた朝食・・・。気になる。

「それじゃ、お願いしてみようかな。」

「かしこまりました。」

 そう言うとしばらく目を閉じたまま黙り込み、すぐに

「では、食材の買い出しに行ってきます。」

「待って待って待って待って!!」

「はい?何か問題がございますか?」

「問題しかないから!俺捕まるかもしれないから!」

「そりゃ、自己を持った自立式のAI作っちゃったんですから、法には触れてますけど。」

 あー、やっぱり作っちゃってたかぁ・・・。ってそうじゃなくて。

「今の恰好で外に出たら余罪増えるから!」

「・・・それは、そうかもしれませんね。」

「良識を理解できるようで助かるよ。」

 言わなきゃダメっぽいけど。

「ではどうしましょう。くまなく探索しましたが、私にあっていて、なおかつ外に出られるような服は見当たりませんでしたが・・・。」

「今、くまなく捜索した。って言った?」

「?はい。これから暮らす住居におけるものの配置などは、覚えておいて損は無いと思いまして。」

「ってことは、家に何があるかも、何がどこにあるかもわかるってこと?」

「もちろんです。パソコン内におけるデータもすべて把握済みです。・・・検索履歴も。」

 そこで顔を赤らめなくていい。

「それじゃ、俺が無くしてた金庫の鍵は⁉」

 AIは口を開かず、首を振って結果を教えてくれた。

「そっか、じゃぁもう、あきらめるしかないかな。」

「・・・開けるだけならできますが。」

「だめだ。鍵として使う引っ掛かりを、金庫の中にある金庫の鍵にしてるんだ。何を入れたかすらわからないから、下手に傷つけるわけにはいかない。」

 何が入っているかは覚えていない。それでも、大事なものを入れていたことだけは覚えている。

「そうですか。では、私は何をしましょうか?」

 仕事が欲しい。というように聞こえるけれど、なぜなのだろうか。

「うーん・・・わかった。ひとまず服を買ってくる。その間に、できる分だけでいいから、掃除してくれると助かる。掃除道具少ないから、すぐ終わっちゃうけど。

 だから、今あるもので何か作ってもらえないかな?」

「いえ、その、冷蔵庫に何も・・・。」

「大丈夫。米と海苔がある。」

 一瞬、ありえねぇ・・・。みたいな視線を感じたんだけど気のせいかな?

「・・・わかりました。」

「うん、それじゃぁ、俺は行ってくるよ。」

 早く支度をして、さっさと買い物に向かう。

「行ってらっしゃいませ。」

「あ、買ってきてほしい物とかあったら、パソコンから、スマホと共有してるメモ帳に入力してくれれば買ってくるよ。」

 そう言い残して家を出た。

『あれ』のこと、隠し通さなきゃなぁ・・・。

昨日のスーツのまま道を歩き、今後のことを考え続ける。

売り出せば兆の桁が入るかもしれない?ばかいえ。豚箱エンドだよ。

家事ができるところや家電を使えることは何の問題もない。問題なのは自我をもってしまっていることだ。

さて...最大級の雑貨店でコスプレ買うか...


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雑ネタ投稿枠 埴輪モナカ @macaron0925

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