メモリー 4 「一樹と理花の恋愛支援計画」
春奈が俺のストーカーであることが分かった日から2週間………舞子総合高等学校は、夏休み中の部活が無くなった。そういう期間なのだ。
良い期間だと俺は思う。つまりは、楽しむ時間を作ろうという試みなのだからな。
だが、俺にとっては最悪の期間だ。何故って?これを見ろよ………
「京滋く~ん」
見ての通り、一時も俺から離れること無く甘えてくる春奈に俺は心底迷惑している……しかし、良い機会だ。そのまま、お前がストーカーだってこと暴いてやるぜ。
そう俺が意気込んだその時だった………
ピンポーン
客か?珍しいな。
「今、出ますよ~。」
俺は、離してくれない春奈を腕に絡ませたまま、ドアの覗ける部分から、誰かを確認する。その瞬間、俺はびっくりした。
それは、同級生の遠藤 理花だったのだ。珍しいな………そう思いながらもドアを開けてやった。
「おはよう。京滋くん。あれ?春奈さん?」
「おはよう、理花。妻が家にいるのは、当たり前でしょう?」
妻じゃねぇよ!勝手に名乗んな!と俺は、心の中で叫んでやったが、理花は、春奈のことをよく知ってるため、ただ微笑む。
本当に理花のそういうところ、尊敬するな………まさに『争いを生まない女神』だな。
「理花……何の用なんだ?」
俺は、理花に冷えた麦茶を出して座らせ、問いかける。
「実は、京滋くんと春奈に相談があるの………」
俺と春奈は、揃って首をかしげた。俺達に相談?
「私が、一樹くんのことを好きなのは知ってるでしょう?」
「あぁ。何となく、気付いてたよ。」
「同じく!」
春奈は、まるで嬉しそうに俺に同意する。この類いの話が好きなのか?
「私……そういう恋愛には、疎くて。それで現役の二人に助けて貰おうと思いました。」
おいおい、待て待て。俺と………春奈が現役だと?
こんな奴と誰が現役だよ。
「理花ちゃんは、お目が高いねぇ~」
終わった……これ、誤解が誤解を生んで真実になるやつだ………。もう、良いや。理花は、大事な友達だし、相談ぐらいなら、乗ってやるか。
「それで、俺達に何を助けてほしいんだ?」
「一樹くんの誕生日って明後日でしょう?」
あぁ~そういえば、そうだったな。忘れてたな…………何か悪い、一樹。
「何となく、分かったぞ。要は、一樹へのプレゼントとその時に、言う告白の言葉を一緒に考えて欲しいってとこだな?」
「良く分かったね!さすがは、春奈ちゃんの亭主だね。」
亭主じゃねえし。っていうか、春奈もそのどや顔やめろ。どつくぞ……。
「じゃあ、早速近くの舞子ショッピングモールに三人でレッツゴー!」
「お~」
春奈の軽いノリにノリノリで乗ってる理花は、すごいよ。俺なんか、手をあげてるだけで顔死んでるし……
そして、俺達三人は、舞子ショッピングモールに到着する。
「よ~し。ソフトクリームを食べよう!」
「プレゼントよりソフトクリームかよ!」
「京滋くん、ごめん。私も食べたい。」
「俺が買うの前提かよ。まぁ、良いけどさ……」
そう、文句を言いながらもソフトクリームを三つおごってやる俺……すると、春奈がやりやがった。
「京滋くん……お口開けて?はい、あ~ん。」
するか……バーカ。そう言おうとした時、俺は、気付く。おい……目線えぐいやんけ。周りの目線が、やれの雰囲気やんけ。春奈……そして、目線を与えてる野次馬ども……この恨み……忘れぬぞ!
そして、ア~ンを観衆の前でして、赤面する俺なのでした。マジで、帰ろっかな…………………
この後、一樹はパソコン好きのため、パソコンを買おうとしたがさすがに高すぎるため、別のを考えることに……そのときだ。春奈がやばいことを言い出しやがった………。
「理花…………一樹くんと付き合うだけで、良いんじゃない?私なら、京滋くんに告白されただけでプレゼントなんて要らないけどなぁ?」
「こ………こっ………告白だけ!そりゃ……一樹くんのことは好きだし、出来れば……付き合いたいなぁとも思うけどさ……それだけで良いのかな?」
「あいつには、勿体ないくらい綺麗だし間違いなくあいつなら応じると思うぜ。」
俺は、自然に言葉に出していた。その通りだしな………
「わかった………私頑張る!」
そして、春奈と理花と話した結果、俺の家でパーティーをして帰りの夜道……一樹がいつも家まで送ってくれるらしいから、そこで告白するらしい。俺達もこっそり尾行するってさ………あのストーカーの容疑者め………。
そして、一樹の誕生日当日となり、俺と春奈と理花で俺の部屋を飾り、夕方、一樹を迎えた。
俺達三人は、クラッカーで歓迎し、料理スキルの高い、春奈と理花の作ったご馳走ではしゃぎ、俺が買ったケーキを食べて、俺と春奈からは、一樹の欲しがっていたパソコンの新しいキーボードをプレゼントしてやった。
結構喜んでたぜ?
そして、遂に告白の時が来た……理花と一樹は家を出て、帰った。その後を俺達が尾行する。
そして、理花の家の前に到着した。
「いつもありがとね。一樹。」
「全然……女の子を守るのは男の勤めだよ。」
一樹……………悔しいが、かっこいいじゃねぇか。
隣で小声で興奮してる馬鹿は、ほっとこう。
「わ………わ……私!一樹くんのこと………好きなの!転校生の私にここまで優しくしてくれて………私……一樹くんと一生一緒にいれたらなぁなんて……そんな馬鹿な話……あるわけないよねぇ」
「…………そうだな。あるわけない。またね、理花。」
「あ……………え………」
まずいぞ………一樹のやつ……どういうつもりだ?理花のやつ……頭が真っ白で混乱してるぞ。
で………隣の春奈という名のアホは、何で映画をみるみたいにはしゃいでるんだ?
あ~あ。遂に、理花のやつ……家の前で泣き崩れた。
その時、俺の目に衝撃が走った。一樹を迎えに来たバイクがあったのだ。金髪の美少女。一樹に兄弟はいない。そうか……彼女がいたのか。それにしても素直に言えば良いものを。まずいぞ………隣のアホは、興奮したままだし、俺が慰めるか…………
「理花………大丈夫か?」
「一樹…………私、魅力ないかな?」
ここは、正直に言うべきだな。
「理花………一樹は、彼女がいたんだ。お前を傷つけないようにわざとはぐらかしたんだ。俺も今知ったよ……ごめんな?相談してくれたのにさ。」
俺は、自然にそっと理花を抱き締めてやる。
理花は、数分俺の中で泣いた………俺もさすがに一樹への好感度が下がった。分からないのか?断るにしてもはっきりしないと余計に傷つくの。
春奈のやつは、なぜかいないし。
「京滋くん………私……うまく行くと思って家族にも旅行にいってもらってて一人なんだ……心細いよ。泊まっていってくれない?」
くそぅ……そんな泣き顔で頼まれたらな……
こうして、俺は理花の家で一晩を過ごしたのだった。
そして、翌日、一樹と春奈は、学校を休んでいた。
「何でだろう?」
昨日、振られた理花でさえ、頑張ってきたってのに。二人とも無断欠席って…………
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