メモリー 3「春奈の正体」

最近の怪しい春奈を見て、観察しようと決めた俺……そして、今朝から『春奈観察』をスタートさせた。

「京滋くん?何か私をいつもより見るね~?」

さすがは、春奈。勘が鋭いな………そういえば、もうすぐ邪魔者が来るよな……

……………ん?

「あれ?来ない?」

思わず、声に出た。そう、一樹が来ないのだ。あの皆勤賞の一樹がだ。

「なぁ、春奈?一樹は来ないのか?」

「一樹くんなら、理花ちゃんと行くらしいよ?あの二人、仲良くなったみたいだね~。」

一樹の奴……遂に一歩踏み出したか。こちらとしては、『嫉妬』が無くなるのは、喜ばしいことだ。でも、新たな問題ができた…………それは、春奈と二人きりで毎日登校しなければ行けないからだ。いや、好都合か。こうなりゃ、このチャンスに乗じて素顔を暴いて見せるわ!

…………我ながら、魔王みたいな言い方だな。

そうこう言ってる間に学校に着き、教室に入った。そこには、幸せそうな顔でにやける一樹と同じく理花がいた。

この二人は、お似合いだな。両想いってことがまるわかりだ。一方春奈は、俺にしか興味がないように俺に永遠に話しかけてくる。

もう、慣れたな…………

ここまで、おかしなことはない……というより、普段からおかしいから、判断がつかないのだ。

キーンコーンカーンコーン キーンコーンカーンコーン

聞き慣れたチャイム音が鳴り響く。

ガララっ!ガタッ……

今……ドアが悲鳴をあげてなかったか?

「お前ら、おはよう。昨日は、心配かけたな。私のハッキング技術でちょちょいのちょいよ!」

と、千夏先生は自慢気に話すが、実は昨日の事件の夜に俺の家に千夏先生と春奈が来て、千夏先生によると、春奈の才能は素晴らしいものだが、千夏先生のように資格がないと、ハッキングは、してはいけないらしい。しかし、今回は春奈の活躍による犯人逮捕だったので、千夏先生の功績にすることで、春奈の違反を取り消すらしいということを俺達に話していた。千夏先生は、10分ほど春奈に頭を下げっぱなしだった。下げなければならないのは、千夏先生をおいて逃げた糞教師共なのにな………。

正直、今回の一件で千夏先生を見直した。

そして、あっという間に一日は過ぎ去り、明日から夏休みである。といっても、夏休みでも部活でいろんな事を学ぶんだがな。

そして、夜。春奈が夕食を作って訪ねてきた。ありがたいものだ。そして、俺の自宅で二人で卓を囲む。

「こうしていると、私達夫婦みたいだね。」

ゲホッゴホッ!思わず、むせちまったぜ。口に入っていた唐揚げが春奈の顔面にヒットするとこだったぜ……それは、男としてアウトだ。最低だ。言いきろう。

危なかったぜ…………。

「そういえば、今夜から一緒に住むね。親も許可くれてるし、京滋くん親族がいないんでしょ?私が面倒見てあげる!」

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

何だって……おいおい、脳の整理が追い付いてないぞ?一緒に住むって?何でだ?おいおいおい。

「冗談は、よせって。」

「何言ってんの?私は、本気だよ?」

俺の夏休み、オワタ…………………そして、結局春奈は、俺の隣で布団を敷いて寝た。高校生が同部屋で隣ってまずいって?仕方ないだろ!今の季節は夏だ。そんなサウナみたいなところに女の子を寝かせれるか?クーラーがついてるのは、居間だけだったんだ。そして、そこが俺のいつもの寝床。

よって、仕方無し!

そして、翌日………起きると春奈が朝食を作ってくれて完成した頃だった。

「旨そうだな……。」

俺の目の前には、コーヒー▪二枚のトースターに、目玉焼▪ハムが4枚。玉ねぎの味噌汁▪苺のヨーグルトが綺麗に並べられていた。春奈って料理が上手いよな……。

そして、二人で食べ終えると、部活があるので家を出た。

「京滋くんって、いつもこの道で行ってる訳じゃないんだよね?」

そうだ………俺は、たまに寄り道でゲームセンターに行ってから、行く時があるのだ。しかし、これは誰も知らないはずなのだ。春奈にとっては、何て事無い、会話だったのかも知れないが、これを知ってるってことはだ。春奈の怪しい理由が分かってきたぞ……。

そんな、怪しい疑問を抱きつつ、今日も何気なく一日が過ぎ去る。

………怪しい疑問は、『確信』に変わった。間違いない。春奈は……………

『ストーカー』だ。俺のな。

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