第44話 白い闇

 夢から覚める少しの間、白い闇が意識の間に挟み込まれる。


 夢から覚めるんだから、それは網膜に映った朝の光りが映ったものなのかもしれない。


 物語の断片のような風景のフィルムが終って、その切り替えみたいな感じだ。


 ある時は昔住んでいた住居の隅の部屋だったり、通い慣れた公設市場の迷路のような通路であったり。


 行った事のない駅や裏路地だったりする。


 記憶にない場所に行った時は本当にここは何処だろうと思案するが、夢だと気づくまでに、本当に時間がかかる。


 記憶している場所が誇張されて、再現されている時は本当にどうしたものだろうと思う時がある。


 一度、大きな鉄橋を汽車で行く夢を見たが、現実にはそこは堤防に沿った国道であり、線路が通っている訳ではない。


 その汽車が堤防の先に行くので、驚いた。


 自分にはその向こうの風景の記憶はないのである。


 記憶にない風景が夢で再現できるのだろうか。


 汽車はどんどん進み、元の場所からまた、進んだ。


 今日も寝たら、夢を見るかも知れない。


 白い闇を見れるだろうか。

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