第24話 写真の女性
昨日の話の続きである。
自分が勤めていた居宅介護事務所に週刊誌の取材が来たらしい。何でも、小野一光著の「家族喰い」で有名になった文化住宅で発見された白骨死体の家政婦さん、どうやら、家政婦紹介所の頃、登録していたらしいのだ。
週刊誌の記者はその女性の写真があれば40万円の報酬を提示した。
そんな大事件が起こるとは思っていなかった、所長は「もし、残っていれば、40万円、もらえていたんや」としきりに悔しがっていた。
うちの母親も実はこの居宅事務所に登録していて、時折、病院以外は個人宅に派遣される事もあった。
もし、被害者を派遣したのが、元の自分の事務所で、もし、自分の母親が派遣されていたら、大変な事になっていただろう。
その手の事には鈍感な銭ゲバのような人物であったが、自分が出張仕事の出先から逃げて、バイトを転々としていた頃、ある時、「韓国籍の人間と偽装結婚しないか。謝礼は100万円」と抜かした事があった。
もう、30年前の話である。
先日、書いた自転車に乗っていた、後にドラム缶にコンクリ―ト詰めされて、港の岸壁に遺棄された人物を近所でよく見かけていた頃の話である。
所長の年齢を考えると、主犯格とされている拘置所で自死されたと言われる女性と同年代である。
この頃、あの申し出を思い出す時、彼女たちと何らかの形で関わっていたかもしれないなと思う時がある。
その自分の勤めていた事務所は所長の女性関係と遺産の相続問題で解散と言う形になってしまった。
小野一光著の「家族喰い」の表紙になった文化住宅と一緒で更地になり、月極の駐車場になってしまった。
こうやって、黒い影はアスファルトの下に埋まっていくんだな。
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