第11話「打合せ終了後……大事件発生!?」
修道院長と打合せをした翌朝……
ロゼールはいつものように午前4時前に起床。
支度をし、4時30分前に礼拝所へと入った。
この時間は朝のお祈りをした後……
聖書に記された、創世神を称える『詩』を、各自が無言で読むのである。
しばらくすると……眠そうな目をしてベアトリスが入って来て、
当然というように、ロゼールの隣へ座った。
ベアトリスは座ってから、万歳をするように両手を突き上げ、大きなあくびをする。
苦笑したロゼールだが、ここは元気よく挨拶する。
「おはようございます! ベアトリス様」
対して、ベアトリスも柔らかく微笑む。
「おはよう! ロゼ 超、眠いわあ」
ベアトリスの声は大きく良く通る。
ロゼールは相手を怒らせないよう、やんわりと制止する。
「ベアトリス様。お静かに。今はお祈りと読書の時間、挨拶以外の私語は基本、禁止ですよ」
「わ、分かったわよ、もう! ロゼったら!」
と、その瞬間。
ロゼールの言う通り、シスター、ジスレーヌこと、
ふたりの教育担当ジスレーヌ・オーブリーがビシッと言う。
「ベアトリス様! 私語は禁止ですよ」
「やっば~! ロゼ、農場で話そ!」
ベアトリスは「ぺろっ」と舌を出し、聖書の詩へと視線を向けたのである。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
お祈りと読書の後は朝食である。
食事中も基本は私語は禁止だ。
ロゼールとベアトリスは食堂で、並んで食事を摂っていた。
修道院の食事は量が決まっている。
肉類は殆どなし。
野菜、卵、乳製品、魚などの献立が多く、日によっては卵がなかったり、食事の回数も減る。
ロゼールは騎士時代、厳しい訓練をこなすが、食欲も旺盛である。
「肉が食べたい~」と渇望し、「お代わりしたい~」と熱望もする。
育ち盛りのベアトリスも、食事が不満足らしい。
しかめっつらで、アイコンタクトを送って来る。
身分の差を超えて、ふたりの心の距離はまた少し近くなった?
という出来事であった。
という事で食事が終わり……
ふたりは農作業の為、修道院付属の農場へ……
他のシスター達とは少し離れた場所で、農作業をするロゼールとベアトリス。
農作業中も私語は禁止なのだが……
他の場所だと目立ちすぎるし、すぐ注意……教育的指導が入ってしまうのだ。
「さあって! やっと相談出来るわね、それでロゼ」
「はい、ベアトリス様」
「昨夜貴女から聞いた、私が取りまとめるという事に関して、段取りは具体的にどうなるの?」
「はい、目的はあくまでも修道院の改革であり、花嫁修業、行儀見習いを行う女子達が、厳しいながらも楽しく修業出来る事が肝要です」
「うん、その通りね。今回出た苦情に対し、修道院長が対応した形にすれば、基本的に問題ないと思うわ」
「ですね」
「ええ。改革したら、創世神教会の教義に基づいた、本来の修道院の生活とは少しかけ離れるけれど、私達嫁入り修行者は正式なシスターではなく、『お客様』だからね」
「はい! その辺りを修道院長様もご理解頂きました。そして、改革を前提にして、全シスターへ聞き取りをする事となりました」
「全シスターへ? うふふ、それは大変ね」
「ええ、結構手間がかかると思います。それと、修道院長の了解を得た、改革の聞き取りだと、シスター達には伝えて良いと言われました」
「へえ! ばっちりね」
「はい、なので、シスター達への聞き取りは基本、私が行います。修道院長にも手伝って頂けそうなのでベアトリス様は、私の報告をお待ちになって、その報告をとりまとめてください」
しかしベアトリスは、首を横へ振った。
「嫌よ、そんなの」
「お嫌ですか?」
「ええ! 私も、ロゼと一緒にシスター達へ聞き取りをするわよ」
「……分かりました。では一緒に作業して頂けますか?」
「了解! その後は?」
「はい、聞き取った内容を集計、精査し、修道院長様と相談し、とりまとめたものをベアトリス様へご提出するつもりでしたが……」
「じゃあ、私、ロゼ、修道院長、あとシスター達から代表を2,3名入れて相談し、会議をする形で、改革の最終案を決めれば良いわ」
「了解です。ありがとうございます、ベアトリス様。とても良いアイディアです」
ロゼールから褒められ、ベアトリスは嬉しそうである。
「うふふ、そう?」
「はい! シスター達から代表者に入って貰い、打合せが出来れば、後々、現場との行き違いがなくなると思います」
「うんうん! それで最後に私から、教皇様、枢機卿様へ最終報告をあげて、改革案の了承を得ればOKと。……修道院長主導という事にしてね」
「はい、ベアトリス様。それで完璧です」
「じゃあ、ロゼ。後で、ふたり一緒に修道院長の下へ行きましょう」
「はい!」
と、ふたりの打合せがまとまった瞬間。
「ぎゃ~っ!!!」
「ば、化け物が攻めて来たわよおっ!!」
「た、た、助けてぇっっ!!」
「創世神様ああ!!」
ラパン修道院に、シスター達のつんざくような悲鳴が響き渡ったのである。
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