第4話「女傑騎士、ラパン修道院の生活にギブアップ」
レサン王国騎士隊の元騎士、ブランシュ男爵家令嬢、ロゼール・ブランシュ。
父・オーバンの厳命により、彼女がラパン修道院へ来た翌日から、
これまでの騎士隊生活とは全く違う『新しい生活』が、始まった。
ここで、無骨な女子?ロゼールにとって、
修道院のような規則正しい生活は苦手なのではないのか?
と、思う方がいらっしゃるかもしれない。
だがロゼールは騎士隊時代、起床時間、門限が決まった規則正しい生活を、
騎士隊の寮において、また自宅で過ごす際も、己へ課していた。
なので、きっちり予定が決められたスケジュールの生活は、
そう苦ではない、却って楽勝だと
しかし……
それは、大きな間違いであった。
騎士隊宿舎の生活と、修道院の生活は、全く勝手が違っていたのだ。
ちなみに、貴族家令嬢としての花嫁修業、行儀見習いの為、
ロゼールのスケジュールは一般のシスターとは少々、違っていた。
また、修道院における、花嫁修業、行儀見習とは、
家事、刺繍を中心とした裁縫、
レサン語の読み書き、詩や物語の作り方、歌い方、
王国貴族の儀礼、作法等の指導である。
家事などは、貴族家において本来は使用人が行うものだが……
貴族令嬢のたしなみの一環として、
習得させられる慣習がレサン王国にはあったのだ。
これらの修養に関し、ロゼールは幼い頃、
母シャンタルから、ひと通り習った気もするが、
騎士になり、鍛錬に明け暮れるようになり、すっかり忘れていた。
さてさて!
具体的には、下記のようなスケジュールである。
また、スケジュール厳守の命令は、
修道院長から、教育係のジスレーヌ・オーブリー経由で、
何度も何度も徹底的に念が押された。
4:00AM――起床
4:30AM――読書『創世神教聖書』等々
6:30AM――ミサ、朝のお祈り……朝のお祈り後に朝食
8:00AM~10:00AMまで午前の仕事……主に農作業を行う。
10:30AM~11:30AM――教育係担当シスターによる、昼食調理を兼ねた料理指導。または交代で家事指導等を受ける。
0:00PM――昼のお祈り後に、昼食
1:00PM――2:30まで午後の仕事……主にお菓子作り、裁縫作業を行う。
または交代で、教育係担当シスターによる、家事指導等を受ける。
3:00PM~4:00PM――教育係担当シスターによる、読み書き、歌唱指導を受ける。
4:30PM――散歩、軽運動に限る。激しい運動は禁止。
5:30PM――晩のお祈り後に、夕食
7:00PM――教育係担当シスターによる、行儀作法、儀礼指導を受ける。
8:30PM――創世神様に一日過ごせた感謝を捧げる寝る前のお祈り、
その後、就寝まで自由時間。
9:30PM――就寝
という「かっちり」した生活である。
繰り返すが……
騎士隊時代の習慣で、ロゼールは規則正しい早起き早寝はそう苦ではない。
しかし、騎士として『武道ひとすじ』のロゼールは、すぐ物足りなくなった。
というか、初日で音を上げ、『脱走』しようかとも思ったくらいだった。
何故ならば、騎士隊時代とは違って、厳しい鍛錬が全くない生活――
散歩と軽い運動だけの生活が、ひどく窮屈な気分になり、すぐに嫌気がさしてしまったのだ。
それから1週間が経った……
運動不足の生活を我慢していたロゼールは、
仕方なく、農作業の際、体操をしたり、出来る限り身体を動かすようにしたが、
ストレスが溜まるばかり。
『あらさがし』の感がある、修道院長の小言がたっぷりと増えた事もあり……
父から勘当される事もやむなしと、
修道院における花嫁修業、行儀見習いをやめ、
最悪の場合、やはりというか、修道院から「脱走する」事も考えていたのである。
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