DLC24 理想のスローライフじゃん
俺はDLCからいろいろと現代のものを取り出して、みんなに教えることにした。
まずはシャルには、積み木やアスレチックを用意してやる。
基本的には、獣人といえど猫っぽいところも多数ある。
なので積み木や、木のおもちゃなんかを与えると、すごく喜んでくれた。
普通にまだまだ子供っぽいやつだな、とほほえましく思う。
なんでこんなになんでもDLCとしてそろっているのかはわからないけど……。
まあ高度なVRMMOとかだったら、そういうものもあってもおかしくないのかもしれないな。
「にゃあ、ドルクはすごく面白い物を持っているにゃあ!」
それから、アスレチックはゴーレムたちに木を運んでもらって、俺の監修で庭にこしらえた。
獣人としての高い身体能力を活かして、シャルは毎日楽しそうに遊んでくれている。
俺もたまにアスレチックに上ってみるけど、ちょっとした手加減のミスで危うく壊してしまいそうになるからやめた。
ルミナは、不器用ながらシャルと一緒に楽しんでくれている。
「にゃあ、ここまで来るにゃ!」
「ちょっと……早いよシャル……! 私そんな早くいけないから……!」
それをレヴィンと俺がしたから見ているというのが、なんとも和やかな時間だった。
「ルミナ様……そっちは危険ですよ! 足元をしっかり見てください!」
時折、アスレチックを上っているルミナの生足や、パンツが見えるので、俺としては眼福だった。
彼女たちには、DLCで出したちょっとエッチな下着を着用してもらっている。
もちろん現代風の下着だから、とても背徳感がある。
まるで俺たちのいるこの周辺だけ、VRMMOの中の世界のようだった。
これぞ理想のファンタジー世界だ。
基本のベースはファンタジーの世界で、現代の便利アイテムも使い放題。
まさに俺の思い描いた通りの、理想の生活を送っていた。
◇
それから、俺はテレビや漫画をDLCで出せることにも気が付いた。
現代にあるものならなんでも取り出せた。
なぜか、俺が知っているアニメや漫画しか見れなかったけど……。
たぶん、DLCアイテムは、俺の記憶や潜在意識から生成されているのだろうか。
とにかく、今までの俺が見たり読んだアニメや漫画を、どんどん彼女たちに履修させていく。
いつのまにか、みんなドはまりしていた。
「なあドルク……! この『ハンター奮闘記』っていう漫画の続きはないのか……!?」
レヴィンが、柄にもなく興奮して俺に尋ねる。
しかし、残念なことに、その漫画は今、36巻で止まってしまっていた。
だから、俺が読んだことあるのも36巻までだし、もちろんDLCで出せるのもそこまでだった。
「すまないレヴィン……その漫画はそこまでなんだ……! 作者がかなり筆が遅いんだよ……」
「そ、そんな……私は今すぐにこの続きが読みたいのに……! どうしてくれるんだ……! 楽しみで眠れなくなっちゃったじゃないかぁ!」
「そ、そんなこと俺に言われても……」
レヴィンは本気で悔しがって、俺の肩を揺さぶってくる。
まあ、あの漫画、かなり面白いからなぁ……。
俺はずっとリアルタイムで見てきたから、待たされるのには慣れっこだけど、レヴィンからしたら漫画自体読むのが初めてだし、待ちきれない気持ちはわかる。
「ああ、よしよし。かわいそうだったな……。今日は俺の胸で寝ていいぞ」
俺はレヴィンの頭を抱えて、なでなでしてやる。
「うう…………すやぁ……」
するとレヴィンは一気に漫画を読んで疲れたのか、そのまま眠ってしまった。
けっこう最近はこうやって、俺に素を見せてくれる。
なんだかんだでかわいいところのあるやつだ。
そういえば最近、俺がこうやってなんでもかんでもDLCで出しすぎて、もはやみんななんの疑問も抱かなくなってきたな……。
まあ俺としては細かい説明などがいらなくて助かっているんだが……。
「ねえ、ドルク……! 私、この子たちにあいたい……!」
「えぇ……それは、まあ……無理だな」
ルミナがご執心なのは、テレビアニメの『ライブラブ』というアイドルアニメだ。
かわいい女の子たちが歌って踊っている様子を、ずっとテレビにかじりついてみている。
ルミナって、アイドル好きの素養があるんだ……。
けっこう意外で、かわいいじゃないか。
そして今、ルミナが見ていたのは、そのアニメを題材としたライブコンサートの映像だった。
アニメのキャラの声優さんが、同じ衣装を着て、歌って踊るのだ。
それを見て、ルミナは振付まで真似して、すっかりファンになっていた。
「ねえ見てみてドルク! 私、こんなに覚えたんだよ!」
「おお、すごいじゃないか! てか……かわいいな……マジで……」
「へ……!? そ、そうかなぁ……えへへ……」
まあ、まだまだぎこちないけど、そういうところも含めてかわいい。
異世界人であるにもかかわらず、こいつらは適応が早いな。
俺がDLCとして出したものなら、なんでも飲み込んでくれるようだった。
まあ、それだけ俺が信用されているのかもしれないけれど……。
この世界の教会の神父とか、そういうお堅い人の前でDLCを使ったら、黒魔術師として裁かれそうだけど……。
まあ、俺がDLCをすべてさらけ出すのは、彼女たちの前でだけだ。
つまり、お互いに固い信頼関係で結ばれているということだ。
「そうだ……ルミナ、ちょっとこれを着てみてくれるか……?」
「え…………?」
俺はDLCの衣装一覧から、さっきのアイドルアニメのコスプレ衣装を選択する。
衣装に関しても、俺が見たりしてよく知っているものであれば、大概のものなら取り出せた。
幸い、俺はコミケにカメラをもっていったりして、コスプレイヤーさんにこの衣装の写真を撮らせてもらったことがあるから、この衣装に関しては間近で見たことがあったのだ。
「ドルク……こ、これって……」
「そう、ライブラブのユミちゃんの衣装だ」
衣装の色は、ルミナの推しキャラと同じものを選んだ。
ルミナは目をうるうるさせて、俺に抱き着いてきた。
「ドルク……大好き……!」
「ははは……喜んでくれたならよかったよ」
それから数週間くらい、ルミナはずっとその衣装を着ていたっけ……。
もちろん、ベッドの上でもそうだった。
まあ、俺としては最高の経験だったといいたい。
あ、それから……。
「なあレヴィン、ハンター奮闘記の続きだけどな……」
「続きがあるのか……!?」
「いや、そうじゃないんだが……こんなものならあるぞ……?」
「これは…………」
俺はレヴィンの気に入っていた漫画の、同人誌をDLCから選んで手渡した。
例の漫画は、長年続きが出ていないせいもあって、ファンの創作がすごく活発に行われていた。
漫画の続きがないなら、続きをかけばよかろうなのだ……! との発想で、みんなこぞって物語の続きを制作している。
その中でも、大手サークルの出している人気のシリーズがある。
そのシリーズは、原作から大幅に物語を進めて、45巻までのストーリーを予想して描いているシリーズだ。
絵柄も原作に非常に忠実で、ファンからの評価も高い。
これなら、レヴィンの気を紛らわせられるかもしれなかった。
「おお、ドルク……これはすごいぞ……! ほかの人が描いたと思えないくら、忠実に再現されている……!」
「そうか、気に入ってくれたか……」
「でも……これはなんだ……?」
「え…………?」
レヴィンが持っていたのは、ハンター奮闘記のBL同人誌だった。
俺がさっきDLCを出したときに、一冊紛れ込んでいたのだ。
「あ……! そ、それは……それは読んじゃだめなやつだ……!」
「そ、そういわれると読みたくなるじゃないか……!」
結局、そのあとレヴィンはBLにもドはまりした。
俺の脳内データーベースに、BLが少ないせいで、すぐにDLCの弾は尽きてしまったが……。
そんな感じで、ここ数日は優雅なスローライフを送っている。
三人とも、すっかり現代日本が誇るコンテンツに魅了されてしまっていた。
もちろん、異世界もののアニメや漫画も見せているので、俺がどういう状況にあるのかも大体察してくれているみたいだった。
「ああ、私もいつか日本に行ってみたいなぁ……」
ルミナが突然、そんなことを言い出した。
まあ確かに、こいつらを直接日本に連れて帰れれば、もっと多くのコンテンツを楽しませてやれるしな。
「そこって、ドルクの生まれ故郷なんでしょ?」
「あ、ああ……まあな……」
「いいなぁ…………」
俺も連れて行ってやりたいのはやまやまだが、あいにく今のところそんなことは無理そうだ。
俺としても、現代に戻るのなんてのは気が進まない。
やっぱり、この異世界でずっと、こいつらとスローライフしていたいぜ。
「まあ、私はドルクがいるところならどこでもいいけどね……究極」
「そ、そうか……。ありがとう。俺も、ルミナたちがいるところが一番だ」
そんな感じで、俺たちの日々は過ぎていった。
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