DLC16 逃亡の理由


「はぁ……!? 学校に行きたくないから逃げたぁ……!?」


「うん、そうなの……」


「はぁ……あきれた……」


 まさかそんな理由だったなんて……。

 もっととんでもない理由かと思っていた。

 しかし、ルミナが行きたくない理由ってなんなのだろうか。


 通常、俺たちはジョブをもらったら、魔剣学校に通わされる。

 まあ、ルミナは貴族みたいだから、それなりに階級の高い学校だろうな。

 かくいう俺も、剣神の息子だから、当然、似たような階級の学校に進むはずだった。


「でも……私、魔法があまり得意じゃなくて……」


「え……そうなの……?」


 それは意外だった。

 俺に魔法を教えてくれたのはルミナだっていうのに。


「もしかしてルミナ、ジョブが弱いのか……?」


「いや、ルミナさまのジョブはそこそこ強力だ」


「じゃあ、どうして……」


 フラッシュライトや回復魔法には問題なさそうだけど……。


「それが、私にとっては怖いの……。ジョブは大丈夫だけど、私にそれを使いこなすことができるのか……不安で」


 なるほど、そういうこともあるのかもしれないな。

 才能を持つものにも、プレッシャーがあるということか。


「それに、私けっこう貴族の中でも浮いてるの……。友達だってできるかどうか……」


 ルミナはこう見えて、けっこう心配性なんだな……。

 臆病というか、引っ込み思案というか。


「それで、学校に入学するのが嫌で逃げ出したのか……?」


「だって、お父様はとっても厳しくて……!」


 だからといって国外逃亡とはなかなかロックなお嬢さんだな。

 まあ、ほかにもいろいろな事情があるのかもしれない。


 その辺は、深く聞いてしまうと無神経だろうか。

 貴族には、よくある話だ。

 前妻の娘が疎まれて、暗殺されかけたり、追い出されたりと……。


「ですからルミナさま! 私がお守りするといっているではありませんか! お父上のことは気にしないで大丈夫です! ルミナさまを暗殺も、追放も絶対にさせません!」


 と、レヴィンがすべて吐いた。

 ルミナはあーあといった感じで頭を抱え、あきれている。


 どうやら俺の推測はあっていたようだな。

 ルミナの家は、かなり複雑な事情にあるようだ。

 だからといって、魔剣学院に行かないってのはどうなんだ……?

 まあ、その辺は俺が言えたことじゃないけど。

 結局、俺とルミナは似たもの同士というわけか。

 実家に居場所がなく、国を出た。

 出会ったのも必然といえる。


「なあんだ。そんなことか……」


 俺は、そう言って見せる。

 あえて、なんでもないように。


「え…………?」


「だったら、俺が一緒に学校に通ってやるよ」


「ドルク……?」


 まあ、俺も学校には通ってみたいしな。

 前世では、全然リア充な学生生活を送ることができなかった。

 だが、今回、この異世界でなら……!

 ルミナというかわいい彼女もいるし、それに、魔法も剣もチート級だ。

 そんな俺なら、もう一度学生生活をエンジョイできるんじゃないのか……!?


「俺も実家に帰って、ちょっと折り合いをつけてみる。だから、ルミナも一緒に帰ろう」


「ドルク……」


 今の俺なら、かなり強い。

 実家に帰っても、親父も文句は言わないだろう。

 というか、むしろ歓迎されるかも……。


 ただ、気は進まないけどな……。

 俺のジョブがごみだからって、平気で追い出したような親だ。

 そんな家には、もう帰ることないと思っていた。

 でも、ルミナのためなら、平気だ。


「それから、ほんとに嫌なら、改めて実家を出ればいい。その時は俺も一緒だ。ただ、学校には通わなきゃ。一回しかないんだからさ! 俺と一緒に家を買って、そこで暮らせばいい!」


「ドルク……うれしい……!」


 ルミナは俺に抱き着いてきた。

 レヴィンが、あわあわとうろたえる。


「る、ルミナさまぁ! そんな露出の多い服で、殿方にくっつくなどはしたないです!」


 まあ、俺はルミナともっとすごいことをしてるんだけど……。

 それが知れたら、また襲われそうだな……。


 ということで、俺たちは一度、国に戻ることになった。

 もちろん、シャルも一緒だ。

 シャルも中等部になら、一緒に通えるだろう。

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