DLC15 追手


「見つけましたよ……ルミナ様――!」


 女騎士は、そう言って俺たちの前に立ちはだかった。


「レヴィン……!」


 ルミナは女騎士のことをそう呼んだ。

 どうやら二人は知り合いで間違いなさそうだ。

 レヴィンは俺を見つけると、キッとにらみつけてきた。


「貴様ぁ!!!! ルミナさまにこんな辱めを……!」

「え……?」


 まるで視線だけで俺を殺す勢いで、そう威嚇する。

 俺、なにかやっちゃった……?


「ルミナさま! はやくその男から離れてください! こんな変態男、私が地獄に送ってやりますよ……!」


 そういって、レヴィンは剣を抜く。

 あ……これは面倒なことになりそうだなぁ。


「ち、違うの……! レヴィン、この人はね……」


 とルミナが説明しようとするも、レヴィンはまったく聞く気がなし。


「説明は不要ですルミナさま……! 脅されているのですね……! この! 恥を知れえええええええええ!」


 ――ッス!


 レヴィンが剣を構えて、一気に俺に距離を詰めてくる。

 速い……!

 少なくとも、今までのやつとはけた違いに強いな。

 しかし、規格外に速いのは俺も同じだ。

 というか俺のほうが速いし。

 俺はレヴィンの攻撃をなんなくよける。


「ほう……! 賊のくせに動けるようだな……!」

「いや、だから俺はそういうあれじゃないって……!」


 しかし、俺がそう弁解したところで聞く耳をもってくれない。

 しかたない、ここは戦うしかないのか……?

 だが、どうもこのレヴィンというのはルミナの知り合いらしいし、怪我をさせるわけにもいかない。

 それに、ルミナを思いやっての行動だし、責める気にもならない。

 どうしたものかな。


「とりあえず、これでも食らってろ! フラッシュライト……!」


 俺は目くらましに、フラッシュライトを唱えた。

 これで、無力化できればいいのだが……。


「ぐあああ! なんという強烈な魔力……! 貴様ぁ! やるではないか……」


 レヴィンは目を腕でかばった。

 よし、これでしばらくは前が見えないはず……。

 しかし、レヴィンはなおも俺に特攻してくる。

 剣を振り回して……!

 だが、決して無計画に剣を振り回しているわけではない。

 こいつ……!

 見えているのか……!?


「うおおおお! 王国騎士をなめるなぁ! このような目くらまし、なんていうことはない……! 一流の剣士たるもの、暗闇の中でも剣を振ることくらい訓練してある……!」


 そういって、レヴィンは俺に剣を振り続ける。

 そして俺はそれをよけ続ける。


 なるほどな……。

 確かに、一流の剣士であれば、相手が見えていなくても、その気配をとらえて攻撃することが可能だ。

 俺も、小さいころから剣神である親父から、その訓練を積まされた。

 このレヴィンとかいうやつ、なかなかやれるな……!


「それに、私には奥の手がある……!」

「なに……!?」


「十字聖騎士斬り――!!!!」


 レヴィンは、そう言って技を繰り出してきた……!


「うお……!」


 これは、俺でもよけられないかもしれない!

 光り輝く十字架が、俺にめがけて飛来する……!

 そうだ、これこそがジョブの差なのだ。

 俺がいくら剣を鍛えても、俺にはそういった剣の技を繰り出すことができない。

 だから、俺は剣使いジョブ持ちには、剣では一生勝てない。

 そのはずだった。


 だが、今の俺はステータスで他を圧倒している。

 そんな俺に、スキルなどの小細工は必要ない!


「ふん……!」


 俺はよけることなどせず、その十字架を、剣で切り裂いた!


 ――ズバ!


「なに……!? 私の十字聖騎士斬りを、ただの剣技ではじき返しただと……!?」


 そう、俺はもう、ただ剣を振るだけで最強なのだった。

 そろそろ、レヴィンの目も復活してきたところだろうか?

 どうやらレヴィンはかなりの手練れみたいだから、結構本気を出しても大丈夫そうだということがわかった。

 まあさすがに剣を体に向けたりはしないが……。

 とりあえず彼女の剣を叩き落せば、それで勝負はつくだろう。


「よし……! こっちもそろそろ仕掛けさせてもらう……!」


 俺は、剣をレヴィンに構えた。


「っは……! 魔術師のくせに、私に剣を向けるとはな……!」


 あれ……?

 俺、魔術師なんて名乗った覚えはないんだけどなぁ……。

 まあ、さっきのフラッシュライトの威力を見れば、そう思うのも無理はないか。

 

「いや俺は魔術師なんて言った覚えはないがな?」


「それだけの魔力を持っていて、魔術系のジョブでないはずがないだろう……!」


 レヴィンはすっかりそう思い込んでいるようだった。

 まあ、それならそれで、油断しておいてもらおうか。


「ま、俺はもともと剣士なんだけどな……!」


 ――ッダ!


 じめんを蹴って、一気に距離を詰める。

 そして、俺は剣を巧みに操り、攻撃する。


「な……!? まさか、本当に剣士だというのか……!? そんな馬鹿な! 貴様のような変態が、私よりも優れた剣士であるはずが……!」


 しかし、俺の剣はみごとにレヴィンの剣をはじいた!


 ――キン!


 レヴィンの剣が、地面に落ちる。


「っく……くそお! ルミナさまをお守りするのが私の役目なのに……!」


 さあて、ようやくおとなしくなってくれたようだな。

 まったく、勘違いもいい加減にしてもらいたい。

 だが、ルミナにはいったいどんな事情があるのだろうか。


「っく……殺せ……!」


 レヴィンはそういって、俺に跪いた。


「は…………?」


「剣を奪われてはもう戦えない。いいから殺せ……!」


「いや、殺さないけど……」


 女剣士のくっころが聞けて、俺は大満足だけどな。

 レヴィンはルミナの従者みたいだし、殺すなんてとんでもない。


「えーと、じゃあルミナ。説明たのむ」


「あ、うん……あのね、レヴィンよく聞いて。この人はドルク。私をたすけてくれたりした、恩人よ……? だから、そんなふうにドルクを攻撃するんだったら、私、レヴィンのこと嫌いになっちゃうから」


「な、なんと……! ルミナお嬢様の恩人であられましたか……! こ、これは失礼を……!」


「は、はぁ……」


 なんだかせわしない奴だ。

 というか、そんな説明で済むんなら最初からそうしてくれ……。


「それで、ルミナはなんでこいつに追われてるんだ……?」


 まあ、ルミナとしても今まで黙っていたことだから、言いにくいことかもしれないが。

 この際だからぜんぶ話してもらおう。


「えーっと、あのね……」


 ルミナは、これまでの事情を話し始めた。

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