第30話 Sランク女冒険者を裸にできるのは俺だけだ-追放したパーティリーダー視点-


「ベ、ベル。よく来てくれたな」


 ギランは両手を上げて、無抵抗の意志を告げる。

 持っていた斧もどこかに放り投げる。

 普通に戦って勝てる相手じゃない。

 ベルが怒っているようだが、どこか勘違いしているようだ。


「俺は悪くないんだ。全部こいつらがやったことなんだよ」

「は、はあ? 何言ってるの!?」


 憤慨するリップは白々しいことを言って、ベルを混乱させようとするが、そんなことはさせない。


「うっせぇんだよ!! 黙ってろ!! お前らが俺を貶めるために、俺のことを止めなかったんだろうが!! お前らが悪いんだよっ!!」


 ここで出方を間違えたら殺される。

 とにかく身の潔白を証明するんだ。

 悪いのは全部こいつらなんだから。


「ほら、こいつが持っているんだ。地竜の卵は。だから、こいつを止めるのが先で――」


 再度、吹き飛ばされる。

 風の精霊による攻撃は、魔力を消費する分、詠唱する必要がない。

 Sランクともなると魔力操作の予備動作がほとんどない。

 つまり、防御不可避の一方的な攻撃が、ベルには可能なのだ。


「……もう、喋らなくていいですよ、あなたは」

「ごほっ、あがっ!!」


 風が斬撃となって飛んできたせいで、腹部に傷を負って血反吐を吐く。

 普段の物腰の柔らかいベルとはまるで違う。

 膝が恐怖で震え出してきた。


「地竜の卵はどこですか?」

「そこに、そこにあります。儂は協力した。だ。だから、儂は見逃してくれ!!」

「…………」


 商人がみっともなく命乞いをする。

 このままだとあの商人だけが助かるかもしれない。

 そんなの許せない。


 商品が指差した方向に無言でベルは歩きだした。

 その方向は俺の方向だった。

 チロリと、近く似合った棚を見ると、そこには木箱があった。

 そういうことか。

 頭の回転が早いと、即座に自分が取るべき正解が思いつくものだ。


「おっ、と。動くなぁっ!!」


 木箱を手に取って蓋を取ると、やはりそこには地竜の卵があった。


 そして、想像通り、ピタリとベルの足は止まった。

 これは面白くなってきたな。


 さっきまでは、この大事件の責任を取らされて、あわや処刑されるかも知れないところまでいったが、ベルをこれで制御できるかもしれない。

 それどころか、さっきから遠慮なしに攻撃してくるベルに、楽しい仕返しができるかもしれない。

 そう思うと、口角が上がる。


「なんだかよく分からないけど、これが、今あんたが欲しいものだってことは分かった。なあ、おい、攻撃するなよ、もう!! 攻撃したら、俺がこの卵を落として割れるかもなあ!!」


 そう言うとベルは歯噛みしながら拳を握る。

 悔しがっている姿を見ると、面白い。

 主導権は握らせてもらった。

 これで、ここからどうするかは自由だ。


「今、一刻を争う事態なんです。それを渡してください」

「なんで、だよ? 理由を言え、理由を!!」

「……それは、よりにもよって地竜の王の卵だったんです。だからこれだけ事態が大きくなってしまった。それを親元に返せば、もしかしたら地竜の王の怒りは収まるかも知れない。それが最後の希望なんです」

「……へえ。いいこと聞いたなあ」


 要約すると、今、ベルはギランに逆らえないってことだ。

 もしもこれを渡さなったら、地竜の王とやらの強いモンスターが暴れを止めない。

 親玉が争いを止めれば、今暴れている地竜達も暴れるのを止める。

 つまり、冒険者達の命運は、ギランが抱えている卵にかかっている。


「さて、俺の言うことを聞かないと、この大切な卵、落としてしまうかもなあ。そうだな、とりあえず、服を脱いで全裸になってもらおうか」

「ちょ、ちょっと、何言っているの? ギランッ!!」

「うるせぇな、ミレイユ!! お前がさっき俺を要らない奴扱いされたのは忘れてねぇからな!! ベルの身体で一通り満足したら、次はお前だっ!! 身体で奉仕してもらうからなっ!!」

「なっ……」


 ミレイユは絶句するが、当たり前だ。

 ここにいる全員が復讐対象だ。

 何せ、全ての元凶なんだから、こいつらは。

 裁かれなくてはならない。

 ギランのように、優秀な人間の手によって。


 まずは、女の身体で遊ぶ。

 リップは幼児体型だが、それはそれでいい。小さいながらも必死になって、いきり立った激情を抑えるために動いて欲しい。

 ミレイユは胸が大きいので、それを存分に活用して色んな身体の部位を挟み込ませて愉しんでやる。

 ベルは汚してやりたい。

 高慢な態度を取っていた奴が、嫌悪しながらも無理やり卑猥な行為をさせるというのに興奮する。

 女が三人もいるのだ。

 同時に奉仕させるのも最高だろう。


 男達はただ見ているだけで、その悔しがっている姿を見るだけでも満足だ。

 地べたに伏せている状態で、三人から奉仕されている音だけを聴かせるのもいい。


 そうだ。

 レイリーにも聴かせてやろう。

 弱い癖に、何故かSランク冒険者のベルが高い評価をしているし、二人は仲がいい。

 それも腹が立つ。

 二人の仲を引き裂いてやる。

 レイリーの悔しがりながらも泣いている姿を見れば酒の肴になる。


「あなた達も地竜に殺されるかも知れないんですよ?」

「別にぃ。俺はここから逃げるから関係ないね」

「大切な人を見殺しにしてですか?」

「大切な人? そんな奴いるかよ!! 一番大切なのは自分なんだ!! その次に大切なのは俺の言う事を聞ける人間なんだよ!!」


 くだらない言い合いはもう、うんざりだ。

 早くベルの裸を見たい。

 冒険者なら誰もが憧れる女の裸を見られると思うと興奮する。

 ベルのように責任感の強い奴なら、必ず屈する。

 他の男達よりも先に、ベルを美味しくいただいてしまおう。


「さて、とりあえず誠意を見せてもらおうか。お前が裸にならないとみんな死ぬかもしれないんだろ?」

「くっ……」


 服を一着一着、脱いでいく。

 屈辱に満ちた顔がまた面白い。

 脱ぐ動作が遅くて、まるで焦らされているようだ。

 ゴクリ、と唾を飲む。

 白い肌が見えて、思っていたよりも派手な下着が煽情的で――


 横からミレイユによって、体当たりされる。


 釘付けになっていたから、ミレイユがこっそり近づいていたことに気づけなかった。


「やああ!!」

「ミレイユ、お前っ!!」


 ミレイユは箱ごと奪おうとする。

 それを取らせまいと俺は、思いっきり箱を引っ張った。


「は?」


 引っ張る力が強すぎて、箱が空中を待った。

 口を開けて何もできなかった。

 箱はそのまま落下して、卵が割れた。

 中身が溢れ、グロテスクな光景が目の前に現れる。

 ぐったりとした地竜の幼体が、目を瞑ったまま死んでしまっている。


 まずい。

 全部、ギランのせいにされてしまう。

 脅しの道具がなくなってしまったら、ギランは殺されてしまう。


「お、俺のせいじゃねぇえええぞおおおお。俺のせいじゃ!! 押したせいだあ!! ミレイユが押したせ――ガハッ!!」


 ロウに全力で殴られて、ギランは転がる。

 ギランは涙を流しながら、ベルに助けを求める。


「これから自分達はどうすればいい?」

「どうしようもないですね。地竜の王を倒すしか方法はなくなっただけです」


 ベルは冷たく言い放つと、踵を返す。

 素早く脱いだ服を着込む。

 大切な人がいるダンジョンへと向かうために。


「生きていてください、アリア。それに――レイリー」


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