第24話 新しいパーティの結成

 ギランが捨て台詞を吐いて去ってから、先程仲裁に入ってくれた受付嬢の人が近寄って来た。

 彼女は、以前から冒険者ギルドで働いているベテランの人だ。


「気を付けてくださいね」

「え?」

「あの人、最近悪い噂を聞くんですよ。ギルドの仲介なしに戦利品を売買しているかもしれないって」

「そうなんですか……」


 俺が抜けてから、ギラン達がどうなっているのかを知りたかったけど、今の受付嬢の言葉と、ギランの言動で大体わかった気がする。


 どうやらやってはいけないことをやっているらしい。

 それにあの焦り用、それも上手くいってないのかも知れない。


 わざわざ俺を誘ったりしないはずだ。

 あんなに俺のことを追い出したかったはずなのに、自分からわざわざ勧誘しに来たってことは、新人と上手くいっていないのだろう。


 まあ、俺みたいに罵詈雑言を我慢できる人間じゃないと、ギラン達のパーティとは馴染めないだろうからな。


 あのパーティに入るであろう新人のことを憂いていると、受付嬢の人が心配したような声色で謝ってきた。


「すいません。こんなこと言って。気分悪かったですよね。元同じパーティの方ですもんね」

「い、いいえ。今完全に決別しましたから」


 あれだけ正面切って拒絶したのは初めてだったかも知れない。

 キッパリ言ったので、長い付き合いのギランも相当に驚いていた。

 もう、あれだけのことがあったので、勧誘なんて馬鹿な真似はしてこないだろう。


 これでスッキリした。

 本当だったらもう二度と会いたくないけど、冒険者同士、必ずここで出会うことになるだろう。

 ただ、その時はお互いに目を逸らして、話し合うことは二度とないと思う。

 そう思っただけで、心が軽くなった。


「それじゃあ、業務に戻りますね。私も、ベルもあなたのことを応援していますから」

「あ、ありがとうございます」


 味方になってくれる人がいるっていうのは本当に嬉しい。

 受付嬢の人は元の場所に戻って行った。


 そういえば、ベルさんがいない。

 たまには冒険をしないと腕がなまるのでダンジョンへ潜ることもあるから、ベルさんがいないのは分かる。


 でも、アリアもいないな。

 まだ護衛任務についているのだろうか。

 あの二人が同時にこの冒険者ギルドにいないのは珍しい。


 踵を返すと、黙ったままのシャンデとリュミがいた。

 近づいても言葉を発そうとしない。


「どうしたの? 二人とも」

「いいえ。ただ、少し驚きまして」

「驚いた?」

「レイリーさんが私達のことを仲間と言ったので……」

「えっ、ごめん!! 勝手に」


 言ったっけ?

 いや、言ったな。

 無意識に仲間だとか、パーティとか言っていた気がする。


 怒りのあまり、頭が真っ白になっていたけど、ギランに宣言してしまっていた。

 迷惑だったろうか。

 何の相談もなく、勝手に仲間宣言してしまった。


「いいえ。嬉しかったです。そんなことを言ってくれる方は今までいなかったので」


 シャンデの恥ずかしがる姿が妙に色っぽかった。


 そうか。

 ちょっと返答に闇を感じるような気もするけど。

 シャンデの過去も気になるところだけど、俺と同じ気持ちだったようでほっとした。

 勝手に俺が言い出したことで、怒られても仕方なかったけど、許すどころか賛同してくれているみたいだ。


「冒険者登録をしたら、他の町や国に行っても有効なのだろうか」


 リュミが一歩前へ出る。


「それは、そうだけど……」


 冒険者になれば登録カードを貰える。

 それを持っていれば、冒険者の証になって、他の冒険者ギルドへ行っても冒険者として認めてもらえる。

 他の場所へ行って一々登録し直さなくてもいいのだ。


 ちなみに登録カードには制作した場所が記載される。

 その記載場所が、有名な場所だとレアらしく、高値で取引されるらしい。

 本人の名前が記載されているから、他人は使えないのだが、それでもコレクターがいるのだ。

 ちょっとその辺の趣味は理解できないな。


「なら、登録の仕方を教えて欲しい。私達はここに長居するつもりはなかったが、色々と知らなければならないことがあることが分かった。だから――ここで学べることがあるのなら、長居しようと思う。教えてくれないか? 冒険者のことを」


 リュミは満面の笑みをする。


「冒険者登録の仕方を教えて欲しい。――レイリー先輩」

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