【コミカライズ2巻11/24発売!】追放貴族は、外れスキル【古代召喚】で英霊たちと辺境領地を再興する ~英霊たちを召喚したら慕われたので、最強領地を作り上げます~
第47話 新たな召喚者は、目の前で困っている人のため
第47話 新たな召喚者は、目の前で困っている人のため
2
盗賊らに絡まれていた少年は、まず俺の顔をまっすぐに見た。
そして言うには、
「信じてください! 僕、ほんとに盗みはやってないんだ。ほら、なんにも持ってないでしょ?」
とのこと。
あらゆるポケットがひっくり返されるが、身銭の一つ出てこない。
嘘はついていなさそうだが、気になるのはそれ以前のことだ。
気絶したままの男らを目の端で見ながら、聞く。
「どうして、あんな奴らに関わったんだ?」
少年は、一度うつむいた。それから、悔しそうに声音を強める。
「どうしても、お金が欲しかったんだ……。それで、仕事をしたらお金をくれるって言うからついていったら、盗みをしなさいって言われたんだ」
「お金が欲しかったのか……。それにも理由があるのか?」
「う、うん。僕のお母さん、病気なんだ。でも、そのお薬が高くて買えなかったの。
でも、宝石を奪えば、なんでも治るポーションをくれるって言うから……」
まったく、外道極まりない連中である。
俺は再度、白目を剥いて倒れたままの男たちを見て、ため息を吐いた。
そんなものが、あるわけがない。
Aランクポーションでさえ、なんでもは治らない。
男らは、初めからこの少年を騙すつもりだったらしい。
「お兄さん、どうにかなりませんか……?」
まだ疑うことも知らないだろう瞳に、涙が揺らぐ。
「若様……、どうされるのです? ポーションは専門外なのでは」
バルクの言う通りではあったが、見て見ぬ振りはできない。
ここで子供を突き放しては、ラベロの名が落ちるというもの。
「いいや、大丈夫だ。うん、なんとかしてみせる」
「お兄ちゃん、ほんと!?」
「あぁ、秘策があるんだ。さっそく、お母さんのところへ案内してくれるか?
バルクさんは、こいつらを収容所まで運んでくれませんな。自衛団の方々を使ってくださって結構ですから」
バルクが、「はっ! かしこまり申した」とお固い答えとともに、表通りへと出ていく。
俺は少年に案内を受けて、彼の家まで向かった。
こじんまりとした一軒家にあげてもらい、寝室へと通される。
ベッドに横たわり、布団を被っているの女性が彼の母らしい。
口をきくこともままならないろうで、虚な目でこちらを見る。
「……お兄さん、どうするの? もしかして、高いポーションをもってるの?」
「いいや」
「じゃあどうやって……」
「まぁ少し見ていてくれよ」
俺は、その場でステータスバーを開く。
____________
【古代召喚】
四千年前の古代を生きた者の魂を実体とともに、現代に復活召喚させ、従わせる。
また、そのスキルと同等の能力を得る。
(利用可能能力)
・龍の神力 レベル4/5
・錬金術 レベル5/5(MAX……進化能力あり)
・調味料生成 レベル3/5
・罠作成 レベル1/5
・剣士の『気』 レベル4/5
・獣王の猛り レベル2/5
領主ポイント 5000/5000
次回、求める英霊を確定で召喚!
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そう、次なる召喚ポイントは溜まりきっていたのだ。
そして、5000ポイントの区切りということもあろう。まさかの確定召喚である。
古代文明の再現というはるかな理想のため、可能ならば船大工などの召喚に当てようと思っていたが…………
目の前で困っている子がいるのを見捨ててはおけない。
俺はその場で召喚を発動する。
もちろん、召喚を願ったのは、稀代のヒーラー。
理想を言えば欠けた腕すらも治してしまえるような、圧倒的な治癒力。
「そなたに請われたこと、アポロは心から嬉しく思います。この力を再び人の世のため、お使いしましょう」
光の繭玉の中から現れたのは、白い修道女のような服に身を包んだ淑女だった。
少年が目を白黒させて驚いている。そりゃあそうなる。だって、何もないところから人が出てきたのだ。
「アポロ、とお呼びください。古代において、当代一の治癒回復師と。身に余る評価ではございますが、そう呼ばれておりました」
「えっと、アポロ……。すまない、早速なのだけど」
「状況は見れば分かります。高熱でずいぶん衰弱しているようですね。アポロにおまかせを」
身体の中に眠る邪気を、神気なる聖なる力で祓う。それにより、病を引き起こしている根本原因を除き、治癒にいたるのだとか。
彼女はつらつらと語り続けるが、俺にはよく分からなかった。
わかったのは、あっという間に少年の母親が元気になったということ。
少年は、体を起こした母に抱きつき、しばらく会話を交わした後、
「お兄さん、お姉さん、ありがとうっ!!!」
俺たちに深々と礼を述べた。
「でも、お代が……また今度でもいいですか?」
「いらないよ。通りがかった縁だ」
くしゃり、小さな頭に手を置き撫でてやる。
彼の笑顔で、お代ならば十分だ。
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