第11話 頼もしい新加入者たち



2人で行って、大勢で帰ったのだから、村人たちに驚かれるのも無理はなかった。


多量の荷物と、たくさんの人、普通なら一度に運べるものではないが、そこは伝説的存在である白龍だ。


シンディーっぽく言うなら、

「余裕のよい」だった。


「え、お父さん、お母さんっ!!」


開放したものの中には、テンマ村で暮らしていたものも多かった。


この間、妹と二人でコボルトに襲われていた女性の両親も、その中に含まれていたらしい。


奴隷としての買い手がなく、賊たちの召使いをさせられていたそうだ。


「領主さま、父と母を本当にありがとうございますっ。私レティシアは、一生この恩を忘れませんっ」


その女性は涙ながらに俺の手を握る。

首を振って答えながら、少し胸が熱くなった。


「……わたくしより先にディルさまの手を!?」


と、シンディーが妙な対抗心を抱くが、彼女はそれを気にしない。


レティシアは、両親と同じく捕まっていたドワーフやクマベア族にも礼を言って回る。



まるで怖がる様子がなかった。

特殊な状況下ということもあってか、種族間の軋轢も今のところはないらしい。


単に、解放の喜びを分かち合っていた。




俺はその輪に混じらず、冷静になって俯瞰する。

人が増えたことは大変喜ぶべきだが、問題もある。


「家、どうしようかなぁ」

「ディル様、ディル様! わたくしがいますよ」


いや、それはいけない。

かなりの人数が帰ってきて、かつ他の種族まで仮とはいえ、この村に留まるのだ。



そんな量の家を錬金なんてすれば、シンディーがまた過労で倒れてしまう。


文官も、側近の職も、かなりの重労働だったが、俺は部下に無理な仕事は強いたくない。


「領主さま、それなら任せてくだせぇ! おらたちは、ものづくりはこの身についた職でさぁ」


そこへ話しかけてきたのは、ドワーフの男だ。

髭面をにししと緩ませて、


「少しの家くらいなら、日の沈む前までに作ってやらぁ! ちょっとした仮の家さ。どうだい、領主さまよ」

「えっ、そんなことまでできるんですね」

「ははっ、あたぼうさ。俺たちの血には、ものづくりが染み付いてんのよ」


なんと頼もしいのだろう。


ドワーフの彼が手を差し出してくるので、俺は握手を交わして、そうしてくれるよう頼む。


「もし夜までかかるようなら、俺たちが見張っててやるぜ!

 あの賊には卑怯な手を使われ、不覚にも捕われたが……少しは腕も立つのさ」


と言うのは、熊のような耳を頭に生やしたクマベア族。


低く唸るとともに、力拳を作ってみせる。たしかに、筋肉隆々かつ剛毛で、頼りになりそうだ。


「でも、あんな風に捕まってて疲れてないですか?」

「領主さま。あんたが助けてくれたときに、そんなもの全て吹き飛んださ! 俺は、あんたの力になりてぇんだ」


いい仲間に恵まれたものだ。


なんとかうまくいくかもしれない。視界良好とはこのこと。


気分よくそう思っていたら、


「ディルさまぁ。なんで、わたくしもできるのに、なんで……」


シンディーだけが露骨に落ち込んでいた。


肩を落として、まるで霊かのようにどろーんと髪の後ろに顔を隠す。


「シンディーに、無理してほしくないからだって。それに、あぁいうのはみんなで作る方が団結力も上がるだろ」

「……そうですけど。じゃあ、わたくしにもなにかお仕事を〜!!」

「んー。なら、一緒に街へ行こうか。まだ少しやりたいことがあるんだ」


ぱぁっと表情が晴れあがる、ほんとに!? ほんとに、ほんとですか! と声が上ずっていく。


行きます!!! との答えは、すぐに返って来た。

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