第11話

 太陽が顔を隠し始め、村は橙色一色に染まる。小学生と思わしき子供達はもっと休みたい、明日の学校行きたくないと呟き、主婦達は家族の弁当を作るのが面倒だと井戸端会議を開いている。誰もが明日訪れる月曜日に憂鬱となっていた。

 夕焼けの中、麦わら帽子を目深に被り、黒いロングのワンピースを着た一人の少女が歩いていた。彼女は小さな電気屋の前で足を止める。道路に面するようにテレビが並んでおり、そのテレビ達の画面にはニュースが流れていた。画面の中では、壮年の男性アナウンサーが原稿を読み上げている。

「先ほど警察を通してレインエンジニア社から、先日の襲撃事件の被害が発表されました。機械天使の製造機械には僅かながら破損があったものの、製造には問題ないとことです。また、顧客に渡す予定だった機械天使はどれも無傷であり、すぐに顧客に引き渡せるそうです」

「……え? 嘘?」

 ニュースを見ていた少女は思わず、そうこぼした。あの日、機械天使は徹底的に破壊したはず。なぜ無事なんだ。

 その疑問にテレビの中の男性アナウンサーが答えてくれた。

「報道当初は機械天使は破壊されてしまったとありましたが、それらはあくまで予備パーツだったようです。顧客に引き渡す子達は工場内にいたそうですが、襲撃犯に見つからなかったと。いやー、良かったですね。無事に新しい家族の元に行けるみたいです」

 ゲストとして呼ばれた芸能人達も男性アナウンサーに同意。

 一方、少女は拳を握り締め、踵を返り歩き出す。

 口元を大きく歪め、その目はどす黒く憎悪に燃えていた。

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