第10話
工場が襲撃された翌日、土曜日。
朝食を食べ終わった秋穂はリビングでコーヒーを飲みながらテレビを見ていた。画面にはニュース番組が映っており、昨日のレインエンジニア社の工場襲撃事件が取り上げられている。襲撃犯の格好が田村夫婦を殺害した犯人と同じだったのだから、マスコミが取り上げないはずがない。番組内では犯人が捜査を撹乱するためだの、レインエンジニア社に恨みがあるだの、愉快犯によるものなど、好き勝手なことを言っている。
何故、工場が襲撃されたのか、それは秋穂にも見当がつかない。
「そういえば、なんで田村さん達は殺されたんだろ?」
今までは自分達の天使の無実を証明することばかり考えていた。ほんの少しだけ余裕ができた今、田村夫婦に興味が湧いてきた。
夫婦とは機械天使の打ち合わせで数回会っている。奥さんが子供のできない身体であり、子供の代わりにと機械天使の購入を希望していた。人当たりが良い夫婦であり、秋穂達には無茶な要求などしなかった。
「そういえば」
秋穂は夫婦とのある会話を思い出す。夫が写真を趣味としており、最近始めたSNSに載せている。機械天使とは様々な場所に旅行に行き、写真に残したい。そう言っていた。
秋穂は自室からパソコンを持ってきて、夫婦の名前を検索。メジャーなSNSに登録しているのを発見。そのSNSを覗いてみると、夫が撮ったであろう写真が公開されていた。山や公園、車内、家での何気ない一コマが写っている。レインエンジニア社から機械天使が来た日の写真は特に枚数が多く、天使の写真ばかりだ。その日を境に、茜と名付けられた天使と一緒の写真がアップロードされるようになった。写真からは夫婦がいかに天使を大切にしていたかがわかる。自分達の天使が愛されていたことを知り、秋穂は思わず頬を緩める。それと同時にこの夫婦が殺害されたことがより一層わからなくなった。どう見ても人に恨みを買うような夫婦ではない。
「あれ?」
写真を眺めていた秋穂は、あることを疑問に思った。写真には夫婦と天使の三人が写っているものが多い。確か夫婦は二人暮らしだったはず。
では、一体誰がこの写真を撮っているんだ?
写真を一つずつ流れるように表示させていくと、ある一枚の写真が目に留まった。
田村夫婦は白いワンピースが似合うような機械天使が欲しいと言っていた。その際、こうも発言していた。
この子には暗めの服ではなく、白など明るい服を着せたいと。
秋穂が目を留めた写真は、家の中で撮ったであろうもの。カメラに向かってピースする三人の後ろ、半開きのクローゼットに、黒いドレスのような服がハンガーに掛けられていた。
「……これはまさか」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます