第2話
二〇XX年、インターネット上にとある設計図が出回った。その設計図には、人間の子供のように無邪気に振る舞う高度な人工知能、しなやかな人工筋肉、人間の皮膚と同じ質感の人工皮膚、それらを組み合わせて作った子供型アンドロイドの製造方法が書いてあった。設計図にはナカモトという名前と、こう一文が添えられていた。
この設計図は自由に使って構わない。私は金も名誉も望まない。望むことはただ一つ。私の機械仕掛けの天使に命を与えておくれ。
最初はこの設計図を誰も相手にしなかった。どうせ誰かの悪戯だろう。まともに動きやしない。信じて作るのは酔狂な人間だけ。だが、そんな酔狂な人間が、企業が日本に存在した。従業員が十人にも満たないその企業は設計図を基に子供型アンドロイドを実際に作り、販売した。本物の子供のように天真爛漫に振る舞うアンドロイドに世間はすぐに魅了され、注文が殺到。その酔狂な企業は零細企業に不釣り合いな莫大な利益を手に入れた。他の企業も独走を許すまじと慌てて追従。そして、子供型アンドロイドは瞬く間に世界中に普及したのだ。
いつしか世間はアンドロイドの愛らしさと設計図に書かれていた言葉から、彼らをマシンナリーエンジェル、機械天使と呼ぶようになった。企業側も次第にその名称を使い始め定着した。
現在、機械天使は子育ての予行練習や、新人教師、保育士の教育、セラピー、子供に恵まれなかった家庭へのフォローなど幅広い分野・場所で使われており、陰日向に社会を支えている。そして、技術者達はもっと高性能な、より人間に近い機械天使を作ろうと日々頭を悩ませる。
この物語は、田舎の中小企業に勤めるとある若きエンジニアが己の技術、プライド、機械天使とひたむきに向き合う話だ。
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