3 まだ続く婆様の話
※ ※ ※
俺はただ愕然ロしていた。
この話は、初めて聞く話ではない。いや、聞くのは初めてだが、この光景を実際に俺は見たのだ。
今年の春先、拓也さんと初めて会ったその前の日の晩に見た夢、それがものすごく強烈で印象的であり、今でもはっきり覚えている。
まるでVRで見たのではないかと思うくらいだ。
もちろんあの二万年前のミヨイ国での出来事の記憶のようにはっきりと記憶として甦らせられたのとは違いあくまで夢であり、そのような夢を見たことも忘れかけていた。
それにしてははっきりと覚えていすぎる。普通夢というのは変な夢を見たなあと思ってもたいていはその日のうちに忘れてしまうもので、たまにいつまでも覚えている夢があってもこんなに鮮明に記憶に残っていたりはしない。
だが、あの夢だけは特殊だった。
そして、今婆様から聞いた話が、まったくあの夢と同じストトーリーだったのだ。
ほかのメンバーはやはり初めて聞く話にそれぞれ衝撃を受けていたようだけど、俺だけはとにかく唖然としていた。
「ですが今の話はあくまで表向きの話」
婆様の口調が変わって、少し声が落ちた。
「いいですか。皆さん、よく聞いて下さい。今話した出来事には、実は裏があるのです。それこそが本当の意味での神界の秘め事、トップシークレットなのです。今、この時点でもこのことは、神霊界では岩戸の中の前天帝、つまり国祖神の国万造主大神様しかご存じではないことです。しかし、間もなくそのことが、今回の天意の大転換、神界現界大ひっくり返しの大建て替えと関係してくるのです。そして山武姫神との騒擾を終息させるカギともなります」
かなり大きな重要事項を告げられると、皆息を殺して婆様の次の言葉を待った。しかし婆様は、首を静かに横に振った。
「事の重大さゆえに、今ここで告げてしまうことはできません。もう少し待ってください。本当に近い将来、すべての秘密をあなた方に打ち明ける時が来ましょう」
そしてまた、婆様の口調は元に戻った。
「さて、それから後の神霊界はと言いますと……」
唖然としている俺たちを前に、婆様の話はまだ続くようだ。
俺の夢はあそこで終わっていた。だが、実際はまだその先の話があるようだ。
※ ※ ※
政権を掌握した天照彦神と水の眷属の御神霊たちは、神霊界の統治を任されていよいよ意気盛んになったと思うでしょう。でも、天帝となった天照彦神は日々意気消沈していたのです。
恋慕してやまない金龍姫神は、国祖神ととともに天の岩戸の中に隠遁してしまいました。しかも金龍姫神はその時点で男神に
それでも天照彦神の想いは金龍姫神の上を寸時も去らず、北東の空を仰いでは恋い慕い続けるばかりでした。
従って、神霊界を統治するみ役になったとはいってもそれは形だけで、実験は皇后となった山武姫神が握っていました、
山武姫神は天照彦神に対してもう誰にも遠慮なく、思う存分愛情をぶつけてきます。天照彦神はもうそれだけの存在で、天帝など名ばかりだったのです。まさしく山武姫神の傀儡でした。
そんな状況ですから、天照彦神は心情的にもほとんど消沈していて、何もやる気が起きません。当然のこと、神霊界は混沌とした状況になっていきました。
人類界に対しましても、今は従来のように人類と御神霊が直接コンタクトすることはなくなりました。ごくごく一部の限られた特定の人とだけ間接的につながっているだけで、地球上の大部分の人びとは神霊界とのつながりも断たれたのです。これは、国祖神が隠遁する際に、神霊界と人類界の直接のコンタクトを禁じたことにも由来していました。
ですから人類界では神霊界の実在を疑い、あるいは存在を否定する者たちも増えていきました。
神霊界の乱れた状況は人類界にも反映し、山武姫神の天照彦神に対する愛欲の炎はますます燃え上がり、天照彦神は今でも金龍姫神を思い続けるというこれもまた愛欲の炎となって、それが現界にも移って人類界も愛欲むき出しの世界、戦乱に明け暮れる世界となり、何度も天変地異を繰り返す状況になってしまったのです。
その愛欲の炎は高次元の五次元神界にも立ち昇り、さらには警視総監役の義理天上神から天の御三体神様への訴えもあって、これまで看過してきた神霊界の状況を神界としても見過ごすわけにはいかなくなってきました。
そこで、天の御三体神の「天照日大神」様は神勅を下し、山武姫神の皇后の地位の剥奪と神霊界からの追放をお命じになりました。
本来は音楽を愛する優しくて美しい女神であった山武姫神も、この時ばかりは顔を真っ赤にして憤怒の形相となり、磐十台神や天照彦神の分霊である
それからというもの、山武姫神はその恨みの想念から金毛九尾のキツネを生じさせてそれを操り、多くの妖魔をも生み出して神霊界を襲い、現界の人類にまで悪影響を及ぼすようになってしまいました。
その中心となって働いたのが、皮肉なことに天照彦神の分霊の天若彦神で、その名は邪神の代名詞にもなっています。「
一方、神霊界は天照彦神を真中心に水の眷属による統治が続いたわけですが、先ほども申しました通り人類界に対してはほとんど放置状態でした。
人類界は陰光の時代となり、諸々の
ただ、それと引き換えに、物質文明、科学技術文明は極度に発達し、頂点を極めては天変地異で滅んで一気に原始化してまた文明を復興するの繰り返しでした。
そんな中で、天照彦神はただひたすら天の岩戸から国祖神が再びお出ましになるのを待ち望み、その暁には天帝の座をお返すする思いでいっぱいでした。
そうして人類界の時間で数百万年の時を経て、やっと今から三千年前に国祖神がお出ましになる準備が始まったのです。
まずは神霊界から離れすぎてしまった人類界にブレーキをかけるべく、モーセ、釈尊、イエス・キリストなどその他何人もの聖雄聖者が人類界に降ろされました。もちろんその方々の魂は隠遁している火の眷属の御神霊の分魂です。
そんな時になって、山武姫神の方でもついに自らの欲望を一気に実現させるべく、とんでもない暴挙に出てそれを実現させてしまったのです。
それまで、水の眷属の統治の世となっても万国棟梁たる世界
それからだいぶ空白期間があったのですけれど、人類が原始時代から石器を使い、鉄器、青銅器を使う時代と文明が発達するのを待って、ついに自らの魂を分魂として入れた天皇を誕生させました。
それを知った天帝天照彦神は、大地が震動するほどに地団駄を踏んで悔しがったといいます。
でも、天の掟を破って誕生した天皇である以上、もはや万国棟梁世界天皇となることはできません。
それが
神武天皇は肉体的血統は盤古系、すなわちユダヤの血を引いています。
早速山武彦神は新しい天皇家に、それまでの歴史を
それでも天皇家はかつての万国棟梁世界
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