『火星短信』 20


   『火星短信』 臨時号第2号



 『われわれは、いつの時代においても、ばかにされ続けなのだろうか。


 つい、数時間前、火星政府の高官は、地球と、タルレジャ王国に本社がある、マツムラ・コーポレーション・タルレジャが、代理を務める勢力との三者による協議が妥結したと発表した。


 その、『謎の勢力』は、火星と月の裏側に研究所があり、さまざまな研究をしているが、火星や地球に流行している伝染性疾患の極めて効果的な治療薬を開発したので、タルレジャ王国に仲立ちしてもらい、地球政府を通じる形だが、実際はすみやかに、火星にも、配布したいとした。


 治験は一部実施中だが、間もなく完了で、効果はほぼ、90%以上であり、予後も良好だということ。


 政府筋は、緊急承認するかまえであるという。


 まるで、パンダに後ろから鼻をつままれたような話だ。


 もちろん、効果的な薬ができたなら、それは、喜ばしい。


 それに尽きるが、その、『謎の勢力』とは、我々の用語であり、政府筋は、ある『民間主体の研究所』であるとしている。


 それは、誰なのか。


 月の裏側に、太古の時代から存在する、科学研究所がある。


 これは、我々の関係では、すでに常識であり、詳細な潜入レポートもある。


 地球政府筋とは、話がまったく、すれ違いになっている。


 彼らが言うには、開拓時代初期の、管理倉庫なのだという。


 そこで、働いていたという信頼できる人のレポートと合致する、現実に活動中の、さまざまな、不可思議な施設があった(る)ことは、明白なのに、倉庫だというのだ。


 さらに、最近、伝説の火星人面岩の地下で、なんらかの重要な会合が持たれたらしいというのは、各種有力紙でも、注目の的にある事実だ。


 これは、オカルトだとか、科学だとか、言ってられない事態である。


 マスコミ関係の緊密な協力が望まれる事態だ。




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