第3話 おもてなし

買い物から帰ると、メイド長が私たちに駆け寄ってくる。


「お帰りなさい。ただいま、お客様をもてなしております。2人とも荷物おいて、

 着替えたらすぐに来るように。」


『はい!!』


買った野菜などを保管庫にしまい、急いで着替える。

またあいつに会うのかといやな気持になるが、サーナ家のメイドとして、粗相はしないようにしなくては。



サーナ家のメイドたちが作ってくれた料理を堪能していると、2人のメイド、先ほど道ですれ違った子たちが入ってくる。


「お飲み物をお持ちしました。」


カーミがお盆に乗せた飲み物を持ってきてくれる。

美しい白い陶器のティーポットと、ティーカップ。

その一連の仕草に淀みはない。

見惚れるほどだ。

・・・欲しいなぁ。


メレイアという子は立って指示をじっと待っている。

顔は笑ってはいるが、視線が痛い。

我慢するしかないだろう。


「とても綺麗に紅茶を淹れるんだね。」


「これはメイド長から教わったんです!!」


目を爛々として話始める。

要は、片手しか使えないカーミのために、メイド長自ら片手のみでいかに紅茶を上手に淹れられるかを考え教えてくれたそうだ。


差し出された紅茶からは確かにいい匂いが漂ってくる。

私とて貴族である身、様々な紅茶を飲んできた自負はあるが、

この紅茶の味は初めてだ。


「これは・・・。」


「私が開発したオリジナルブレンドです。」


にこりと笑うカーミ。


「そんな驚いた顔をされて・・・美味しくなかったですか?」


惚けていた、酔っていた、紅茶の味に、カーミの笑顔に。

まるで別世界、言うなれば天国にでも来たような気分だった。


「あぁ、いやすまない。あまりにも美味しくてね。

 うん、よし、決めた。」


ある1つの決意を抱く。


「カーミ。僕の嫁になってくれ。」


「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?!?!?!?」


今まで沈黙していたメレイアが絶叫する。

何事かと奥様、メイド長など、皆が集まってしまう。


「何事ですか!!メレイア!!」


メイド長がメレイアに問い詰める。


「あら、これはヌアエ様、こんな辺境の土地に何しに?」


奥様がメイド長を制し、ヌアエに話しかける。


「あぁ、いやなんてことはない。僕はカーミを嫁にすると決めたんだ。」


「・・・あっはははははは!!!!」


奥様が笑い転げる。


「ひぃ、つらい・・・く・・くくく・・んふ・・・・。」


「そんな笑うことあるか!!!!!本気だぞ!!!!!」


顔を真っ赤にするヌアエ。


「カーミをよく見てごらんなさいよ・・・もう・・・ぶふ・・・。」


ヌアエがカーミを見ると、カーミは何とも言えない苦し紛れの笑顔をしていた。


自分の発言が途端に恥ずかしくなる。


「で、でもこれから落として見せるさ!!

 今日のところはこれで失礼する!!」


「はいはい、またいらしてね。」


シーンと静まり返るサーナ家一同。


「それで、あの方って?」


沈黙を破ったのはカーミだった。


メンタル強いなぁ・・・カーミちゃん・・・。


「あぁ、ヌアエ様ね。彼女は女王様の姪よ?」


そこにいた誰もが固まり、同じ言葉を発してしまう。


『ゑ・・・?』

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