[20211217] 渡りの仲間(五)

 ジーマトを頼りにターバル渡りは続く。体を冷やさないようにアレム・ヤードゥル砂除けを纏って、アレムを踏むエーラーナーの背に揺られる。

 ジュナブ外の人間の二人もエーラーナーに揺られている。二人乗りだ。ユーヤ男の方はぐったりとして、後ろに乗っているシル女の方に寄りかかっている。眠っているのかもしれない。

 こういう時、シルは不意に歌い出すことがある。言葉はわからない。意味がある言葉なのかもわからない。ヒブ仲間の誰も、それがどこの歌なのか知らなかった。

 女の声は高く細く澄んでいる。静かなラール・アレム砂の夜に、染み渡るように響く。

 誰かは見た目の通りにラマーのようだと言った。他の誰かはアレムに降り注ぐクファル・ジーマト星の光のようだと言った。

 ジーマトは、水に姿を変えたルハル・マー水の精霊クファル・ジーマト星の光は水の輝きだ。人のターバル渡りを助け導いてくれるラハル・マー水の慈悲

 シルはきっとユーヤのために歌っている。それは確かに慈悲ラッハだな、と思った。

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