[20211218] 渡りの仲間(六)

 今回のヒブル・ターバル渡りの仲間の中でウリングラス・ナングスまで行くのは、俺とダキオ、それからユーヤとシルだけだった。残りはウリングラスの森の手前でまた戻っていった。

 ウリングラスは相変わらず蒸し暑い。水も植物も食べ物も豊富で、初めて来たときは驚いた。

 初めてのときは、空気の重さにも、食べ物がすぐに腐るのも驚いた。ナングスたちが気前よく食べ物を配って回るのは、それでじゃないか。とにかく次々と食べ物を渡された。その辺りで採ってきた果物や、海に入って獲った魚や貝、それらを使った料理。それからアガ

 その頃の俺は子供だったので、ただもらうばかりだった。ダキオが俺の分まで、ナングスたちに食べ物を渡していたらしい。ホブザだとかヤファタ・ロヌム干しロヌムだとか。特にホブザは残しておいてもウリングラスだとすぐに腐るから、さっさと配って食べきる方が良い。

 こうやって、お互いの食べ物を分け合って一緒に食べるのが、ナングスたちと仲間ヒブになる方法だ。

 ウリングラスに到着してすぐ、重たい空気が雨になった。デリクケ雨宿りのために近くの家に駆け込む。何もわかってない様子のユーヤとシルも引っ張り込む。そうなれば、あとはナングスたちから食べ物が出てくる。

 ユーヤは初めてのことで、渡される食べ物に戸惑っている様子だった。そして、慌てたように慣れないタザーヘル・ガニュンの言葉でクランジラン感謝の言葉を口にする。

 きっと、昔の俺はこんなだったんじゃないかという気がした。感謝を口にするだけ昔の俺よりハッサましかもしれない。マヤーいや、あの時の俺はもっと子供だった。このくらいの歳の頃なら俺はもっと分別があった。

 俺はあの頃のダキオのように、ユーヤとシルの分までナングスに食べ物を配って回る。隣でダキオが面白そうな顔をしているのがムゼイ気に喰わない

 ナングスの誰かがくれたのは、この辺りでよく見かけるトホグ・アスという果物だった。ユーヤもシルも手に持ったまま食べようとしない。食べ方がわからないのかと気付いた。目の前で食べてやったらようやく食べ始めた。

 食べている間、ユーヤは何かとシルの世話を焼いていた。この二人は恋人というより俺とダキオみたいなものかもしれない。そのダキオは俺が何かとユーヤの世話を焼いているのを見て、笑っていた。やっぱりムゼイ気に喰わない

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