[20211207] 花のような糸と勇ましい羽(三)
わたしはそれを真似て、糸を編んでみている。トウム・ウル・ネイの糸で編むとどうしてもオール・アキィトと違う雰囲気になってしまうけれど、わたしは自分の好きな色の糸を集めて編んでいた。
指を動かしながら、
山に降りた先の
祖母に聞いた昔話にそんな話があった気がする。トウム・ウル・ネイの若者が山に降りた先で女の人を気に入って、そのまま攫って逃げた話。あるいは、トウム・ウル・ネイの女を気に入った男が、ルーに乗ることもできないのに、なんとかトウム・ウル・ネイまでやってこようとする話。
あの二人にも、そんなことがあったりしたのだろうか。
しばらく前に、いずれわたしを攫いに来る相手と会ったことを思い出す。
わたしと同じくらいの年の男で、
二人で話せと言われても、何を話せば良いのかもわからない。向こうも不機嫌そうな顔のまま黙っていた。だからただ二人で何も言わずに立っていただけだ。わたしの父と
後から母に「どうだったか」と聞かれたけれど、何も言えなかった。「嫌か」と言われて困ってしまう。嫌も良いもわからない。わたしは母に「わからない」「何も話さなかった」と素直に伝えた。母は笑って「何回か会ううちにわかるでしょう」と言った。
わたしはこっそりと、どうせ向こうから断ってくるだろうと思っていた。何も話すことなく終わってしまったのだ。それにずっと不機嫌そうな顔をしていたし。
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