第26話

 前話のあらすじ

 夜桜家の家族構成が、小夜、風和、お母さん、小夜のお父さん、風和のお父さんという修羅場みてぇな地獄の構成であることが発覚!

 まだ小夜がロリりんだった頃。

 風和が風和のお父さんをもぐもぐしているところを見る。

 もぐもぐするのは夜桜家の運命であることが知らされる。

 全ては何かを封印するためのものなんだと!

 ちなみに風和の吸血衝動はパパンをもぐもぐした時に癖になったからだよ。

 以上あらすじ!

 本編どーん!!!



 


 

「お兄、様?」

 

 私の視界に入るのは大好きなお兄様の顔。

 

「なん、で?」

 

 私は魔怪の攻撃を受け、吹き飛んだはずだ。何も出来ずに吹き飛ばされ、自らの命を失ったはずだ。

 そして、私は。自分のルーツとも言える光景を、走馬灯として思い出していた。そのはずだった。

 だけど私は今、生きていて視界にお兄様を捉えている。


「大丈夫?」

 

 お兄様は私に声をかける。


「う、うん」

 

「そっか。良かった……」


 お兄様が私を下ろす。

 ここでようやく気づいた。私がお兄様に抱きかかえられていることに。

 

「〜〜〜!」

 

 私は自分の体温が上昇しているのを感じる。お兄様から私に接触してくれたのは初めてかもしれない……!自分から行くのと相手から来てもらうの。そこには雲梯の差があった。


「ふっ」

 

 お兄様は私に向かって微笑みかける。

 

 衝撃


 私の体に、脳に衝撃が走る。

 今までは自然のものだと思い、なんとも思わなかった。

 だけど、違う。

 お兄様は別に輝いてもいなかったし、来ていた服は黒だった。

 だけど今、


 

 お兄様の顔は日のように輝き、その衣は光のように白くなった。

 


 思い出す。

 あの日。あの日のお母さんの言葉を。


『全ては神様、イエス・キリストを封印するために』

 

 そう。私達の一族はユダヤの名において、キリスト教の命により、復活したイエス・キリストを封印し続けていた。

 イエス・キリストが昇天した。そう言われるようになったその日から今日に至るまで。


「お兄様……?何が……?」

 

 理解できない。

 なんでお兄様が?キリストのように……?

 震える。

 なんで……なんでお兄様から封印を感じられないの?封印は、今。解かれた?


「……ん?分かるでしょ?」

 

 お兄様はさも当然のように告げる。


「封印は!?お兄様は!?」


「安心して。負けないから。いなくなったりしない」

 

 強い言葉でお兄様が告げる。

 ……勝った?イエス・キリストの意思にお兄様が勝った、ということ?

 そんな……まさか……。

 突然のことに動揺を隠せない。

 なんで?

 ……お兄様が……殺されることは……無くなった?……運命に打ち勝った?

 お兄様は死ななくて済む?


「大丈夫。小夜を残して死んだりしないよ」

 

 お兄様が優しく私の頭を撫でてくれる。

 その手のひらは温かく、小さな頃。お父様に……お兄様のお父様に頭を撫でられてたときの記憶を思い出させた。


「任せて」

 

 お兄様は優しく微笑み、目の前で狼狽えている魔怪にゆっくりと近づいていく。

 


「お前は俺を怒らせた。万死に値する」

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