第23話

「意外と頑張るじゃないか。うん」

 

「……」

 

 僕は魔怪の言葉を無視して刀を振るう。

 言葉を返すような余裕もない。


「くっ」

 

 ギリギリのところで魔怪の攻撃をいなしていく。一撃一撃が攻撃が重い。

 刀を振るい続ける。

 防戦一方。

 

「ほら、もっと頑張れよ。うん」

 

 魔怪の速度が更に上がる。

 ……まだ早くなるのか……。


「あっ……」

 

 かする。

 巨大な魔怪の攻撃がかする。

 ほんの少しかすっただけ。それだけで僕は思いっきり吹き飛ばされる。

 

「いっつ……」

 

 僕はそのまま地面に強く叩きつけられる。

 暗くなる。

 視界が。

 

「っ……らぁ!!!」

 

 僕は刀を振る。

 僕に迫りくる魔怪の足を刀で切断する。


「すっ……」

 

 僕は全力でその場から逃げる。

 僕が切り裂いた足はあっさりと再生してしまう。

 そして、さっきまで僕がいた場所を踏み抜く。


「逃げろよ。うん」

 

 魔怪は僕に向かって何度ども何度も足を踏み降ろす。

 くそっ……!いちいち早い……!

 

「うん。うん」

 

 僕は逃げ惑う。

 反撃……反撃のタイミングが欲しい」


「はぁはぁ」

 

 息が荒くなっていく。

 瞳が霞み、寒くなってくる。

 穴にでっかく空いた傷口からだらだらと血が流れている。

 最早出し尽くしたのではないか?血を。

 あまり長くはやっていられない……かな。

 

 防戦に徹しながら反撃の隙を伺っていると、魔力を。

 遠くから近づいてくる魔力を感じた。

 ……良いタイミングだよッ!

 今のままじゃちょうど魔怪を滅ぼすだけの魔力が足りないところだったんだッ!

 でも……!これなら……!


「ふっ」

 

 僕は動きを止め、内なる魔力を解放していく。

 すべてを出し尽くす勢いで。


「!?」

 

 目の前の魔怪から驚愕の感情を感じとる。


「終わりだよ」

 

 僕は一気に距離を詰める。

 すべてを吹き飛ばさんがばかりの勢いで刀を振るう。

 下半身を一振りで消し飛ばし、上半身に向けても刀を振るう。

 僕の今あるすべてを使った斬撃は魔怪の防御を容易くくぐり抜け、上半身までも吹き飛ばす。

 だがしかし、まだ足りない。

 未だに再生が止まらない。

 完全に塵にするまでこれは倒せない。

 そんな気がしていた。


「こいッ!」

 

 僕は手をのばす。


『あいわかった。借りていたものを返そう』

 

 僕の直ぐ側まで来ていた豚さんを掴み、魔力を返してもらう。


「……これでッ!お、わ、りッ!!!」

 

 返してもらった残り半分の魔力。

 それを一気に解放して、放つ。

 僕の魔力は。

 圧倒的な魔力は再生を続ける魔怪を完全に吹き飛ばした。

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