第20話
「むにゅ」
びっくりして変な声が出る。
なんかいきなり舌が地面から突き出てきたのだ。
速すぎて避けられなかった。
すぐに腕を再生しようとするが、この場にいる死にそうな全員を死なないように癒やすことだけで限界だった。
自分に再生能力を回すだけのリソースがない。
「お兄様!?」
地面が大きく震える。
「にょわ!」
そしてちょうど僕の真下から巨大な腕が生えてくる。
腕は大きく動き、地面が割れる。
地中から出てきたのは巨大な化け物。
僕が見た中で一番大きい魔怪だった。
「おぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああ!!!」
目の前の巨大な魔怪は咆哮を一つ。
その咆哮一つで地面を、空間を、世界を揺らす。
「下がって!」
他のみんなに命令を下す。
この子は……普通に強い。
「ほんさ!」
僕は溢れ出す魔素を魔力に変換していく。
刀を取り出し、握る。
刀に目一杯魔力を流していく。刀から魔力の刃が伸びる。
「お兄、様?」
「さぁ行こうか」
先手必勝。
咆哮を終えた魔怪の両足を切り飛ばす。
「ぷえー」
両足を失い転ぶことを期待したのだが、すぐに足が再生してしまう。
「ほん」
魔力を流して更に刃を長くした僕は狙いを魔怪の首に変える。
首は流石に切られるとやばいのか、腕をつかってガードされる。どんな力かは知らないけど耐久力を上げた腕でしっかりと塞がれてしまう。
「オマエ?ナンダ?」
「ぽ?」
僕は目の前の魔怪がいきなり喋りだしたことに驚き、動きを止める。喋る魔怪とか初めてなんだけど……。
悩む。
どうすれば良いんだろうか?
「……ほんさ!」
悩むのを辞める。
こいつはなんかやばい気がするし、殺しておこう。なんかその方が良い気がする。
「ほいほいほいほいほいほいほいほいほいほいほいほいほいほいほいほいほいほい」
刀を次々と振るう。
相手は図体もでかくて、耐久力も高い。おまけに一撃一撃の攻撃力の高さなら向こうの方が高いだろう。
でも遅い。僕に攻撃を与えられるほどの速さを持っていない。
「おーわり」
僕は刀を振るう。
絶たれる。
魔怪の首が。
僕の速さに追いつけなくなった魔怪が僕の攻撃を防御出来なくなったのだ。
ん……?
確実に僕は魔怪の首を切り落とした。僕の魔力には魔怪の再生を無効化する力がある。陰陽師の呪力同様に。
首を落とし、その存在は確実に消えかけている。
ちゃんと倒せたはずだ。
でも、終わっていない。
そんな予感があった。
「お兄様!」
小夜が僕の方に走ってくる。
「まだ来ちゃダメ!」
ダメだ。
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