第8話

 煌めく。

 糸が煌めき、血肉が落ちる。

 次々と魔怪たちは糸に切断され、ただの肉塊へと戻されていた。

 

「わぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおん!!!」

 

 肉塊を押しのけるように一人の巨大な犬の魔怪が姿を現し、僕に向かって突撃してくる。


「吠えるな。駄犬」

 

 キラッ

 

 切断。

 巨大な犬の魔怪は糸によって一刀両断された。


「すごいでござるな」

 

「えっへん!」

 

 少し離れたところで魔怪と戦っていた雲母が僕の方に近寄ってくる。


「あれは人災級でめちゃくちゃ強いやつなのに一人で倒すなんてありえないでござる……私だって倒すのに時間がかかるやつなのにでござる!」


「……信じられるか?こいつまだ魔怪を知ったばかりなんだぜ?……才能って怖いんだな」

 

 へぇー。あのお犬ちゃん人災級だったんだ。

 もうみんなおんなじようなもんで、階級の差がよくわかっていない。


「ぐるあ!」


「あ?」

 

 いきなり細切れになったはずの人型の魔怪が再生し、僕達に襲いかかってくる。


「ほいさ」

 

 僕の方に伸ばしてきた右手は糸に絡められ、そのまま細切れにされる。


「セェン!!!」

 

 そして、その魔怪の首を雲母が切り落とした。


「あ?」

 

 だがしかし。

 

 バキッコポォコポコポズボッ

 

 確実に切り落としたはずの首は血となりて溶け、魔怪の首から新しい頭がのきのきと生えてくる。

 はぇー、めずらし。


「「ひっ」」

 

 雲母と寛治は頭を再生させた魔怪の姿に悲鳴を上げる。

 僕は容赦なく魔怪を糸でバラバラにしていく。


「あれ?」

 

 だけど、魔怪は再生し続ける。

 僕がバラし、魔怪が再生する。ちょっと楽しいわこれ。

 

「ふむ」

 

 僕は首を傾げる。

 おかしいな。魔怪にこんな再生能力はないはずだけど?


「な、なんでござるか?こいつは!?キモいんでござるけど!」

 

 後ろで雲母が動揺に満ちた声を漏らす。

 

「さぁね?ほいさ」

 

 右手を、左手を、右足を、左足を、

 細切れにする。

 下半身を切り落とし、腕のない上半身だけとなってしまった魔怪を糸で死なない程度でぐるぐる巻きにし、勝手に再生する腕とか足とか下半身とかはずっと切り刻む。


「ふぅー」

 

 僕はほっと一息を吐く。

 

「これどうする?僕じゃ殺しきれないんだけど」


「……ちょっと上の人間を呼ぶから待っていろ」

 

 寛治は一旦反転世界から出る。

 反転世界だとスマホなどを使った連絡が取れなくなってしまうのだ。



「呼んだから後少しもすれば来てくれるはずだ」

 

 反転世界の方に戻ってきた寛治が僕達にそう告げる。

 寛治の言う通りその後すぐに侍の中でも最上位に属する十剣とかいううちの一人がやってきてあの魔怪を運んで行ってくれた。

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