第13話
「ん?なんか変なのいない?」
小さな少年の声が私の脳を揺らす。
太陽。
太陽が現れたかと錯覚する。夢を、幻を見る。
痩せすぎた白衣の男も、偉そうな男も、いきなり現れた気配も、全ての気配をかき消して、絶対の存在としたこの場に立つ。
太陽から溢れる膨大な力が世界を包み、私の中から噴き上がる私じゃない何かをかき消す。忘れさせてくれる。
「君かな?ちょっとごめんね」
太陽が私の方に近づいてくる。
そして、私の身体に温かいものを流し込んでくれる。
私から噴き出していた私じゃないものは、私の蝕んでいた私じゃないものは、温かいものによって流される。
温かいものが私と私じゃないものを包み込む。
私じゃないのものを私に変えてくれる。
身体を蝕んでいた身体の熱さは消えていた。
「あ……あ……」
私はゆっくりと顔を上げる。
そこにいたのは私と同じくらいの年齢であろう一人の少年。
太陽みたい?
冗談じゃない。
太陽よりも輝いていて、太陽よりも美しく、太陽よりも力強かった。
少年は宇宙だ。
お父さんが私に話してくれた無限の可能性を持つ黒い世界、宇宙だ。
少年の身体から溢れ出る力は私を安心させた。
少年の身体から溢れ出る力は紫の線となって顕現している。
細い、細い、細い、
幾つもの線。
それは蜘蛛の巣のように、血管のように、稲妻なように、
少年の姿を覆い、美しい光の模様を見せていた。
「きれい……」
私は呆然と言葉を漏らす。
私の白くて殺風景な世界が広がる。
昔を思い出させる。感情があった頃を。
初めて見る。
こんな美しいものは。
こんな幻想的なものは。
世界はこんなにも……きれい……。
「大丈夫?」
少年の優しさを携えた黒い両目が私を包み込む。
私の身体は震える。
歓喜に、歓喜に、歓喜に。
愛だ。
忘れていた両親の愛を思い出す。
知らず知らずのうちに涙が流れる。
涙が私の頬を濡らす。
少年の優しい小さな手が私の頭をゆっくりと撫でる。
あぁ。
あぁ。
あぁ。
「……醜いな……実に醜い」
あ……。
少年は私から視線を外し、偉そうな男たちの方に向ける。
横顔から見える少年の双眸には優しさなどなかった。
無機質で、冷たい瞳。
確かな怒りを、激情を抱えた瞳が偉そうな男たちを静かに睨んでいた。
「な、な、な、何者だァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!貴様はァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアア!」
偉そうな男は吠える。
勇ましく。
哀れに。
「生憎だが……我の名はお前のような人間に語るほど軽くはないのでな」
少年が腰の刀を抜いて構える。
「さぁ、フィナーレを奏でようか」
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