第11話

「安らかに眠れ」

 

 美しい……。

 私は魔怪と戦う刹那様を見て、内心感嘆の声を上げる。

 圧倒的な速さで、圧倒的な力で、圧倒的な技術で。

 魔怪を葬り去る。

 人知を遥かに超越した刹那様。

 私のすべて。私達『グロプス』のすべて。

 あの日、あの日。

 あの日、忌々しき『ジュネシス』の魔の手から助け出されたあの日から私はこの御方に私の全てを捧げると決めたのだ。

 例え、刹那様が何も欲してなどいなくても。

 

 ■■■■■

 

『ジュネシス』 

 一体いつからだろうか?

 彼らが暗躍していたのは。

 近世か?

 中世か?

 古代か?

 人類が文明を築くそれ以前か?

 わからない。

 何もわからない。

 何もわかっていない。

 だが一つ確かに言えることがある。

 彼らは、彼女らは、忌まわしき怪物はそこにいて、世界で暗躍しているということだ。


 『ジュネシス』


 はるか昔から深い闇に潜み、暗躍し続けてきた闇の組織。

 カルト教団と呼ぶほうが相応しいか。

 彼らは人肉を貪り、人身御供、生物の創造などの背徳的な行為を積極的に行うもの集団。

 人々には理解できない行動を平然と行う怪物たち。

 彼らの目的も組織の規模も何もかもがわからない。

 おそらく暗躍する彼らのことを知っているものは限りなく少ないだろう。

 いや、もういないと断言してもいいだろう。

 日本という小さな島国の政治家などの偉い者たちは勿論。アメリカや中国などといった超大国の大統領、総書記ですら知らないだろう。

 知っているの可能性があるのは、欧州の方でイギリス王室などと言ったようなずっと長く続いている名家くらいだろうか?

 それでも昔の文献などで名前を見かけるくらいでしかないだろう。

 『ジュネシス』はそれだけ深く長く闇に潜んでいるのだ。

 誰も知らない。深淵に身を潜ませる怪物たち。

 それを単独で見つけだしたという刹那様がどれほどすごいことか。どれほどの偉業か。どれほどの知謀か。

 私なんかでは想像することも出来ない。

 私達はあの日。助け出された。

 刹那様よりすべてを頂き、助けられたあの日。

 あの日以来私は刹那様にすべてを捧げると誓ったのだ。


「我はすべてを知っている……」

 

 刹那様がこの場から去るのと同時に私たちもこの場を離れる。

 刹那様はサクッと空間を移動して刹那様のご友人である悠真様のもとに向かった。


「終わりだ。各自調査を続けろ」

 

 私は部下にそう告げる。

 命令を聞いた部下たちは各自散っていった。

 私達は今『ジュネシス』の情報を集めているところだ。

 刹那様が私に任せてくれたのだ。

 私は思い出す。

 刹那様に助けられた運命の日を。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る