第9話
「ぐぉぉぉぉぉぉおおおおおおおお!」
突然。
当然新たなる魔怪が姿をあらわす。
ついさっきまでは確かにいなかったはずだ。
いつ、いつ、現れたの?
私は困惑し、絶望する。
いきなり現れた魔怪の脅威度はおそらくさっきまで私達を苦しめていた人災級を軽々と超える災害級。
ちなみに、脅威度とは魔怪の強さを見て、どれだけの危険性があるかを定めたものだ。
下か順に無害級、傷害級、賊害級、有害級、人災級、大災級、災害級、災厄級、天災級、神災級となっている。
「ここは我がやろう……」
声が響く。
ここにはなかった声が、そして────聞き覚えのある声が。
深々と被ったフードからかすかに見えるきれいな銀髪に黒と赤のオッドアイを持った仮面の少年。……仮面?あれ?仮面なんか被っていたっけ?
「刹那様」
仮面を被った女性たちが彼に一斉に膝をつく。
彼はいつ現れた?
魔怪同様さっきまでいなかったはずだ。
気配も、魔素も、力も何もかもが感じられなかった。
そして、それは今も。
少年の姿ははっきりと見えているのに、少年からは何もかもが感じられなかった。
「哀れな……。呑まれたか」
囁くように
哀れ?呑まれた?
一体誰に向かって言っているんだ?
「せめて、楽に逝かせてやろう……」
「ぐぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!」
怪物が咆哮し、その剛腕を振るう。
だがしかし、それらは彼を、すり抜ける。
幾度も振るわれる剛腕は彼をすり抜け、当たらない。
「な、何が……」
私の口から呆然とした声が漏れる。
なんで、当たらない?
彼は、幽霊だとでも言うの?
「安らかに眠れ」
一歩。
彼が一歩踏み出す。
そして、ただ斬られたという結果だけが残った。
一刀両断された魔怪の体はボロボロと崩れていき、天へと消えていった。
誰も反応できなかった。
いつの間にか彼の手に握られていた漆黒の刀が魔怪を斬り裂いたのだ。
私も、魔怪も、反応できずただ斬られていく様を眺めていることしか出来なかった。
力も、技も、速さもない。
しかし、ただ自然だった。
あまりにも自然すぎた。
斬られるのが当然の結果としてその場に残った。
「時は流れる。時は無情にも流れ行く……」
私の方に振り返り、私に言い聞かせるように言葉を残していく。
「逢魔時は近い」
彼は私に背を向け、歩いていく。
私から離れていく。
「待って!」
私は去りゆく彼を呼び止める。
意味がわからない。
彼は、私に何を教えたいの?
逢魔時とは一体?
「あなたは、あなたは何を知っているの……?」
「我は全てを知っている……」
それだけ、短くも絶対的な言葉を残して、彼は消える。
後にはもう。
何も残らない。
いつの間にか仮面の女性たちも消えていた。
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