第8話
「くっ……!」
強い……!
私は目の前の魔怪の強さに歯噛みする。
私の、私達の前に立ちふさがっている魔怪は人災級。単体では確実に勝てない相手。だがしかし、今この場には私とともに何年も戦ってきてくれた頼もしい仲間たちがいた。
仲間たちと一緒ならば人災級相手にも戦える。
────はずだった。
魔怪の奇襲にあい、いきなり初撃で戦力の半分が負傷。戦線から一時離脱。
残された仲間たちと共になんとか戦ってはいるものの、未だに犠牲者こそだしてはいないものの、犠牲者が出るのも時間の問題だろう。
いや犠牲者が出るどころか、このまま敗北し全滅する可能性だってある。
……私に。私に力があれば……!他の……ように……!
私が諦め、絶望しかけていたその時。
闇が舞い降りる。
漆黒の閃光が踊る。
斬撃の雨を降り、魔怪をずたずたに斬り裂く。
私たちが束になっても敵わなかった魔怪がいとも容易く討伐された。
そこに立っていたのは仮面を被った一人の女性。
そして私達を囲むように幾数人もの仮面を被った女性が立っていた。
「な、何者?」
「我らはグロプス……闇に潜み、闇を滅ぼさんと欲す王の足だ」
魔怪を容易く倒した仮面の女性がきれいな声でそう告げた。
■■■■■
……。
…………。
び、びっくりしたぁ。
僕はいきなり背後から声をかけてきたストーカさんに内心ドキドキする。
いきなり現れないでほしい。
びっくりするから。
それにしても、あのストーカーさんはいったい何者なのだろうか?
いつだったかは忘れたけど、結構前から僕のストーカーしている人だ。
僕が散歩していると今日のようにいきなり立っていたりすることがあるからびっくりするのだ。
いつからストーカーされているんだっけ……?
あ!
そうそう確か丁度人体実験していた闇の組織ブリュンゲルのアジトの一つを壊滅させて、人体実験されて死にかけていた可哀想な子たちに適当に回復魔法をかけてあげた後くらいの話だ!
いやー。思い出せてよかった。
それで、あのストーカーさんはまるで僕の配下のように振る舞っているけど……あんな人僕は知らない。
そもそも僕は神から使命を下されし孤高の剣士。
僕に配下がいるはずがないのだ。
……。
「うわー。すごい」
ストーカーさんが化け物を倒していたところを見ていた僕は思わず声を上げる。
僕以外であんなにきれいに圧倒的にあの化け物を倒した人は初めて見る。
それにあのストーカーさんから感じる力は僕と少し似ている。
あのストーカーさんも僕と同じように神様から使命が下されら者なのかな?だとしたら僕のストーカーさんなんかしていないで、使命を完遂してほしい。
「ふぇ?」
僕の口から変な声が漏れる。
なんかぼーっと見ていたら僕のストーカーさんがいきなり増殖していたのだ。
ストーカーさんは黒い仮面に黒で統一されたイカした服装をしているのだが、そんな格好をした人がいきなり増えたのだ。
ストーカーさんが増えた!?
……み、みんな胸が大きくて美人な人だなぁ。
「って違うし!」
僕は頭を振り払って煩悩を打ち消す。
「我らはグロプス……闇に潜み、闇を滅ぼさんと欲す王の足だ」
そんなことよりここで僕も出ないとかありえない。
今こそ最もかっこいいその時!
なんかストーカーさんが勝手に作ってくれたタイミングを逃すわけにはいかない。
僕も混ぜて!
さっきよりも少し強い化け物が姿を現した段階で僕もボロボロのビルから飛び降りる。
倉橋さんがいるので、正体がバレないように僕もストーカーさんと同じような黒い仮面を被り、そして僕が来ているパーカーについている深々としたフードを被って。
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