第2話

「よぉ。おはよう」


「あ、おはよう」


 僕は佐藤悠真の声を聞いて顔をあげる。

 悠真は僕の幼馴染で血の盃を交わした盟友である。

 見た目は黒髪黒目のどこにでもいそうな普通の男で、僕と違い真なる力に目覚めているわけではない。それ故に僕が守ってあげる必要があるのだ。


「にしても相変わらずすごい見た目だよな」


「どこが?」


「いや、全部がよ。銀髪に赤と黒のオッドアイ。この学校じゃなければ余裕で校則でアウトだよな」


「僕の地毛に文句つけるの?差別だよ?」


 全く。差別なんて駄目だよ。僕の銀髪に一体何の文句があるというのだ!

 僕達が通っている高校は結構見た目の校則は緩い。

 いくらでも髪色は染めていいし、髪型も自由。カラコンやタトゥーをなんか入れていても何も言われない。メイク、整形だって当然オッケーだ。

 服は制服で統一だけど。

 服装には厳しい。

 以前右腕に包帯巻いて学校に行ったら怒られた。

 しかたないから、右腕に封印されたギルティバランを別の場所に封印し直すことになった。

 『世界の若人と友好を深め国際感覚に富む幅の広い勇気ある青年を育成する』というこの学校の創立の精神が理由なそうだ。

 髪色を金髪にしてはいけない?それは金髪の外国人に対する差別か?髪型を校則で縛る?それはドレッドヘアーなどの外国人文化に対する差別か?

 ということらしい。

 そもそも髪が黒色で髪型も同じにしなくてはいけない。それでなければ悪印象を相手に植え付けるなんて日本しか見えていない古臭い下らない価値観だ。

 どんな見た目の人でも受け入れ、好印象を持たならければいけない。

 それでこそ世界で活躍できる人材だ、なんだそうだ。

 だからといってタトゥーとか、なんでもかんでも認めるのはやりすぎな気もするけど。たまに意味もなくとんでもない格好している人がいるし。

 一時、うんこヘアーが学校で流行ったし。

 普通にこの学校狂っているだろ。


「いや、お前の右目はカラコンだろ?」


「違うよ?これは魔眼!我が右目には古き神の力が込められているのだ!紅き月が来たる日に我が魔眼は開放されるのだ!」


 僕は右目を抑え、高らかに叫ぶ!


「いや、お前の家に普通に赤色のカラコンあったぞ?」


 ……。


「違うもん!魔眼だもん!紅き月に共鳴する紅魔神眼だもん!」


「はい。はい。あ、ところで今日転校生が来るらしいぞ?」


「違うから!そんなのどうでもいいから!僕の紅魔神眼はね!」


「おーい。ホームルーム始めるぞー。さっさと席につけー」


 僕がどれだけ紅魔神眼がかっこよく、素晴らしいかを説明してあげようとすると禿げだした頭部を気にする冴えない先生が入ってきて邪魔して来た。

 ハゲのくせに!

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