第1話


「紅き月が。紅き月が昇り、世界は転換の時を迎える。ふふふ」


 僕、夜桜風和は一人廃ビルの屋上で笑う。

 今日もばっちり決まったね!

 いやー、また赤い月が昇らないかなー。

 少し前に皆既月食×スーパームーンがあって、そのときに赤くなった大きな月を見たのだ。

 かっこよかったなぁー。

 でも、皆既月食のときにしか見えないらしいから次に見えるのはまた1年後。

 そして次にスーパームーンのときに見えるのは2033年と結構先なのだ。

 悲しい。


「それにしても結構危ないよなぁ」


 僕は今日、あの化け物に襲われていた女の子のことを思い出す。

 今日は僕がたまたま女の子を助けられたから良かったものの、僕が巡回していなかったら殺されてしまっていただろう。

 もう少し国とかが対策しないのだろうか?

 別に僕が助けてあげてもいいけど、僕には使命があるのだ。

 神より与えられた使命が。

 我が家に封印されし神を、魔の神を、悪の化身を。

 倒すために僕は力を蓄え、新しい段階に到達しなくてはいけないのだ。

 あと、やっぱ正体不明の実力者とかのほうがかっこいいよね!

 というわけで、僕があの化け物を倒して積極的に人を救うことが出来ないのだ。

 ……あ。

 向こうに化け物に襲われている人がいる!

 助けに行かないと!

 僕は急いで現場に向かった。 


 ■■■■■


「ただいまー」


 僕は大きな声で挨拶して家の中に入る。

 あの後僕は順調に活躍し、多くの化け物を屠ることが出来た。

 いい感じに正体不明の実力者として活躍できたと思う。


「おかえりなさいませ。寄り道していないでしょうか?」


 僕の妹である夜桜小夜。中学二年生で、家事万能成績優秀なしっかりものだ。

 見た目もかわいい。真っ黒できれいな瞳に、肩につくくらいのミディアムヘア。

 髪色はきれいな黒色だ。

 ちなみに僕の髪色はきれいな銀髪。

 両親の髪色も黒色。

 祖父、祖母の髪色も黒色。

 僕だけ銀髪。

 意味がわからない。

 親の遺伝子どうなっているのだ?

 まるで遺伝子が切り干し大根みたいじゃないか。


「うん。してないよ」

 

 僕の裏の顔は表社会に出すわけにはいかない。

 それは家族であっても同様だ。


「……本当でしょうか?」


「うん」


「本当の本当にでしょうか?」


 ものすごい念押される。

 しかし、僕の裏の顔は誰にも知られるわけにはいかないのだ!

 たとえ妹であったとしてもね!


「うん」


「……ならいいです。今日の夜ご飯何がいいでしょうか?」


「うーん。ハンバーグがいいな!」


「わかりました。それではお兄様のために美味しいハンバーグを作っているので少し待っていてください」


「うん。いつもありがとう」


「いいですよ。別にこれくらいのとこですから。……それに……私にはこれくらいしか出来ませんから」

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