第35話 エピローグ 戻った日常
翌日から俺たちは普段の生活に戻っていた。
静まり返った雰囲気とは一変して、俺たち三人はまたいつものようにクラスでも会話するようになった。
俺から離れない胡桃に対して、比良咲が俺のために仲介してくれる。そんなはちゃめちゃな生活。男子の殺伐した視線や女子の微笑ましい見守りも平常運転。何もかも元通りだった。
しかし唯一変化があるとすれば、胡桃が比良咲と以外のクラスメイトとも話すようになっていた。女子とは服や趣味などについて、男子とは師匠的な立場に立って武術の伝授をしたりしている。
何をしてんだがと思いつつも、他人との関わりを拒絶していた初めての頃からは想像も出来ない光景。俺は少し離れた場所で目を細めた。
それでも俺の隣にいることが大半を占めており、自分が望んでいた平凡で生活が戻ってくることはなかった。
そして今日も長い一日が終わる。
たわいない高校での日常を終え、俺は自宅に帰宅した。
「和音くんおかえり」
ドアを開けると、一般家庭ながらもメイドが俺を出迎えてくれる。
基本に忠実な白黒のミニスカートメイド服。黒髪ストレートボブ。落ち着いた声音と無表情な顔色はいつも通り彼女らしい佇まいである。
「あぁただいま」
「ご飯にする? お風呂にする? それとも私とエッチなことでもする?」
「三番以外で頼む」
「あらそう。やっぱり欲求不満なの」
「三番以外って言っただろ……」
「確かにそう言った。でも欲求不満である事に変わりはない」
俺が反論しようとも、やはり彼女の態度は微動だに揺るがない。冷徹に平然とした言葉遣いと表情で居続けていた。
あの照れ顔の面影は一切ない。まるで別人のように、いいや、あれが別人だったのだ。これが彼女らしさと言うやつだ。
「あのさ、ドアの前で出迎えてくれるのはありがたいんだけど、やっぱり無理しなくていいんだぜ? お前だって大変だろ?」
「心配いらない。私は和音くん専属メイド。毎日お見送り、そしてお出迎えは私の仕事。故に和音くんも浮気は許さない。あなたの全てを独占する。それが正真正銘の私だから」
「どういう理屈だ。そもそもお前は俺のメイドじゃないって何度言えば気が済むんだ」
結論から言えば、胡桃が抱く俺への依存度はより一層増していた。アプローチも積極的になり、束縛も強力になっている。
こんなんだったら何もしない方がよっぽど平和だった気さえしてしまう。
だから俺はこれからも彼女の誘惑に負けない。どんなに可愛くて、俺を好きだと言ってくれて、しかも俺の仕えてくれる魅力的なメイドだとしても。
そう、メイド。
断じて彼女は男の夢を詰め込んだような専属メイドなんていう存在ではない。
佐倉胡桃は同い年の幼馴染。
そして何より俺たちは両親の再婚をきっかけに、数週間前から義理の兄妹になった関係なのだから。
【あとがき】
読んでいただきありがとうございます。
単行本で表すなら一巻分が終了致しました。
一先ず完結(仮)とさせていただきます。
この先を書くかまだ決めておらず、そもそも話の展開を考えておりません。思い浮かばないかもしれません。
なので一先ず完結(仮)。
また私の作品を見る機会がありましたら、その時はよろしくお願い致します。
改めて、最後まで読んでいただき誠にありがとうございます。
連れ子の少女は無口で無表情なメイドさん くるみ @archprime
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